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事前通知

事前通知概要

総説

登記識別情報を提供する登記申請の場合で、登記識別情報を提供できないときに、登記義務者に対し下記を通知する制度。

  • 申請があった旨
  • 申請の内容が真実であれば一定期間内に法務局に対しその申出をする旨

期間内にこの申出がないと登記申請は却下される。

但し、実務では直ちに却下ではなく、登記官から取下げをすることを促される。

申出方法

申出方法は、事前通知をする契機となった登記申請の方法によって異なる(不動産登記規則70条)。

電子申請の場合

申出は電子申請の方法でする。

すなわち、電子署名を行った上で登記所に送信する。

MEMO

事前通知の契機となった登記申請が電子申請の場合でも、事前通知自体は書面送付の方法で行われる(不動産登記規則70条1項柱書)。

書面申請の場合

申出は書面提出の方法でする。

具体的には、事前通知に同封される申出書に、署名し、申請書又は委任状に押印したものと同一の印で押印した上、登記所に提出する。

登記所への提出方法は持参又は郵送。

特例方式(半ライン申請)の場合

書面申請の場合と同様(平成20年1月11日法務省民二第57号)。

申出期間

法務局が通知を発送した日から二週間。ただし、登記義務者が外国に住所を有する場合は、四週間。

事前通知を要しない場合

本人確認情報の提供

登記申請人の代理人が、申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報(本人確認情報)の提供をし、かつ、登記官がその内容を相当と認めた場合。

公証人認証

公証人が申請人が登記義務者であることを確認するための必要な認証をし、かつ、登記官がその内容を相当と認めた場合。

実務ではほとんど使われない方法。

申請を却下すべき場合

申請に却下事由があれば事前通知はされない。

事前通知の手続き

送付方法

自然人の場合

自然人の住所に本人限定受取郵便で送付(不動産登記規則70条1項1号)。

法人代表者の場合

法人代表者の住所に本人限定受取郵便で送付(同70条1項1号)。

法人の場合

法人の本店(主たる事務所)に書留郵便で送付(同70条1項2号)。

外国居住者の場合

外国居住者の住所に書留郵便で送付(同70条1項3号)。

送付先

法人が記義務者の場合、事前通知の送付先は以下の3つが考えられる。

  • 法人の本店(主たる事務所)
  • 法人の代表者の住所
  • 法人の支配人の営業所

法人の本店(主たる事務所)に事前通知が可能なのは言うまでもない。

また、法人の代表者の住所へ通知することも可能(不動産登記規則70条1項1号参照)。

不動産登記規則70条1項1号は、法人の代表者の住所宛への事前通知をすることができる前提の規定である。

不動産登記規則70条

① 法第二十三条第一項の通知は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法により書面を送付してするものとする。
一 法第二十二条に規定する登記義務者が自然人である場合又は当該登記義務者が法人である場合において当該登記義務者である法人の代表者の住所に宛てて書面を送付するとき 日本郵便株式会社の内国郵便約款の定めるところにより名宛人本人に限り交付し、若しくは配達する本人限定受取郵便又はこれに準ずる方法

では、支配人の営業所はどうか。

この点、事前通知をする契機となった登記申請において、支配人が登記義務者たる法人を代表していれば、当該支配人の営業所へ事前通知を発送することは認められるであろう(不動産登記法23条1項参照)。

登記実務もこのような解釈で運用されていると考えられる。

事実、株式会社日本政策公庫が登記義務者である抵当権抹消登記につき、支配人の営業所への事前通知発送は可能であった。

支配人の営業所へ事前通知送付を希望する場合は登記申請書の「その他事項の欄」に下記の通り記載する。

「支配人の営業所へ事前通知の送付を希望する。」

前住所地への通知

総説

事前通知をする契機となった登記申請が所有権に関するものである場合に、登記義務者につき住所変更登記がされているときは、登記義務者の登記記録上の前住所に、前住所地への通知しなければならない(不動産登記法23条2項)。

前住所地への通知は転送を要しない郵便物として送付される(不動産登記規則71条1項)。

MEMO

前住所地への通知と事前通知は別の手続き。

前住所地への通知が不要な場合

  • 住所変更登記が行政区画の変更による場合(不動産登記規則71条2項1号)。
  • 事前通知をする契機となった登記申請の申請日が、最後の住所変更登記の受付日から3ヵ月を経過している場合(同71条2項2号)。
  • 登記義務者が法人である場合(同71条2項3号)。
  • 本人確認情報が提供された場合で、当該本人確認情報の内容により申請人が登記義務者であることが確実であると認められるとき(同71条2項4号)。
MEMO

本人確認情報の内容につき、申請人が登記義務者であることが相当と認められれば、事前通知が不要になる。

さらに、相当を上回つ確実性がある場合、すなわち、登記義務者が本人であることが確実であると認められれば前住所地への通知も不要になる。

本人確認情報の内容につき、相当確実を区別するのは登記官の心象の問題である。

故に、これらの境界は曖昧である。

また、登記官が前住所地への通知を省略するメリットはない。

すなわち、申請人と登記義務者の同一性につき後に問題が発生した場合に責任問題になるリスクを背負う。登記官は公務員であるのでそのようなリスクを冒す訳がない。

よって、登記官は、本人確認情報の内容から申請人が登記義務者であることが確実と認められることを理由に、前住所地への通知手続きを省略することは通常しないと考えられる(私見)。