抵当権と地役権

地役権

他人の土地を自己の土地のために利用する権利を地役権という。

地役権においては要役地と承役地というワード登場する。

要役地とは地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいい、承役地とは地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。

これを平たく説明すると、ある土地のために利用される他の土地を承役地、他の土地を利用する土地を要役地という。

付従性

地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となる。

登記

地役権設定登記申請は承役地についてする。そして、承役地について地役権設定登記が完了すると登記官が職権で要役地について次を登記する(法80条4項、規則159条1項)。

  1. 要役地の地役権の登記である旨
  2. 承役地に係る不動産所在事項及び当該土地が承役地である旨
  3. 地役権設定の目的及び範囲
  4. 登記の年月日

また、地役権抹消登記申請も承役地についてする。そして、承役地について地役権抹消登記が完了すると登記官が職権で要役地について要役地地役権を抹消する(規則159条3項)。

このように地役権の登記は要役地と承役地の二か所の登記記録が絡む。

そのため、抵当権と地役権を考える上では抵当権が設定された土地が要役地と承役地いずれであるかを注意しなければならない。

抵当権と利害関係人

抵当権設定登記と地役権

抵当権設定登記を申請する場合は利害関係人は存在しない。

地役権設定登記後の要役地に抵当権を設定すると抵当権の効力は地役権に及ぶ。

地役権設定登記後の承役地に抵当権を設定すると抵当権者は地役権者に劣後する。すなわち地役権の負担が付いた土地に抵当権を設定したことになる。

抵当権抹消登記と地役権

抵当権抹消登記を申請する場合の利害関係人とは次の者である。

  • 抹消する抵当権から民法376条1項の処分を受けている者
  • 抹消する抵当権を目的とした差押権者、仮差押権者、債権質入の登記名義人
  • 抹消する抵当権の移転に関する仮登記名義人

よって、抵当権抹消登記を申請する場合に地役権者(要役地所有者)や承役地所有者が利害関係人に該当することはない。

地役権抹消登記と利害関係人

承役地

地役権を抹消する場合に承役地に設定された抵当権の抵当権者が利害関係人に該当することはない。

要役地

抵当権設定登記がされた土地を要役地とする地役権が設定された場合、地役権の抹消登記には抵当権者の承諾は不要である。

これに対し、地役権設定登記がされた後、要役地に抵当権設定され、その登記がされた場合、地役権の抹消登記には抵当権者の承諾書が必要である。なぜなら、抵当権の効力は要役地だけでなく要役地地役権にも及んでいるからである。

先順位抵当権、後順位要役地地役権

順位番号登記の目的権利者その他の事項
1番抵当権設定A
2番要役地地役権承役地 〇〇 

地役権抹消

抵当権者は利害関係人ではない。

登記の目的 地役権抹消
原   因 年月日放棄
権 利 者 承役地所有者
義 務 者 地役権者(要役地の所有者)
不動産の表示
承役地の不動産番号
対象登記の順位番号 承役地の地役権の順位番号

抵当権抹消

地役権者(要役地の所有者)は利害関係人ではない。

承役地所有者は利害関係人ではない。

登記の目的 抵当権抹消
原   因 年月日解除
権 利 者 要役地の所有者
義 務 者 抵当権者
不動産の表示
要役地の不動産番号
対象登記の順位番号 1番

先順位要役地地役権、後順位抵当権

順位番号登記の目的権利者その他の事項
1番要役地地役権承役地 〇〇
2番抵当権設定A

地役権抹消

抵当権者は利害関係人となるので、地役権を抹消するには抵当権者の承諾が必要である。

登記の目的 地役権抹消
原   因 年月日放棄
権 利 者 承役地所有者
義 務 者 地役権者(要役地の所有者)
不動産の表示
承役地の不動産番号
対象登記の順位番号 承役地の地役権の順位番号

抵当権抹消

地役権者(要役地の所有者)は利害関係人ではない。

承役地所有者は利害関係人ではない。

登記の目的 抵当権抹消
原   因 年月日解除
権 利 者 要役地の所有者
義 務 者 抵当権者
不動産の表示
要役地の不動産番号
対象登記の順位番号 2番

承役地所有者の利害関係

ここから先はおまけで読む必要性は低いです。

利害関係の範囲

前述の2つの事例において抵当権を抹消する場合、いずれにおいても承役地所有者は利害関係人に該当しない。

そもそも、承役地所有者は、抹消する抵当権の被担保不動産に係る登記名義人ではない。

それにも関わらず、承役地所有者が利害関係人に該当すれば、抹消する抵当権の被担保不動産以外の不動産の登記名義人も利害関係があるか否かを検討しなければならないことになる。

そうであれば、利害関係の有無の検討範囲はかなり広い。

この点、前述の先例(地役権抹消の際に、要役地地役権より後順位の抵当権者の承諾書が必要であるという登記先例)の見解からすると、利害関係人が広がることは容認されていると言える。

承役地所有者の利害関係

前述したとおり、要役地において、先順位が要役地地役権、後順位が抵当権の場合に、抵当権を抹消するときは、承役地所有者は利害関係人に該当しない。

しかし、この場合、本当に承役地所有者に利害関係はないのだろうか。

例えば地役権の設定契約契約に以下の特約がある場合はどうか。

「地役権は要役地と共に移転しない。」

仮に、上記特約があり、要役地地役権がある土地が抵当権実行により競売されれば、地役権は消滅する。

したがって、この場合、要役地の抵当権が抹消されるか否かは、承役地所有者にとって重大な関心事と言える。

但し、この利害関係は間接的・反射的な利害関係として不動産登記法上の承諾がいる利害関係とまでは言えないのかもしれない。

ここで、間接的・反射的な利害関係であることを理由に利害関係人に不該当という理屈が通れば、前述の先例(地役権抹消の際に、要役地地役権より後順位の抵当権者の承諾書が必要であるという登記先例)における利害関係も、間接的・付随的なものであるといえなくもない。そうであれば先例の整合性に疑義が残る。