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抵当権と地役権

抵当権と地役権の利害関係人

抵当権抹消

  • 抹消する抵当権から民法376条1項の処分を受けている者。
  • 抹消する抵当権を目的とした差押権者、仮差押権者、債権質入の登記名義人。
  • 抹消する抵当権の移転に関する仮登記名義人。

MEMO
抵当権設定登記の場合、利害関係人はいない。

地役権抹消

地役権設定登記がされた後に、要役地を目的とする抵当権設定登記がされた場合、当該地役権の抹消登記には当該抵当権者の承諾書が必要である。

MEMO
抵当権の効力は地役権にも及ぶ(民法281条1項)。

抵当権と要役地地役権

先順位抵当権、後順位要役地地役権

順位番号 登記の目的 権利者
1番 抵当権設定 A
2番 要役地地役権 承役地 〇〇 

抵当権抹消

地役権の要役地所有者⇒利害関係人ではない。
※地役権の要役地所有者=登記権利者

地役権の承役地所有者⇒利害関係人ではない。

地役権抹消

抵当権者⇒利害関係人ではない。

先順位要役地地役権、後順位抵当権

順位番号 登記の目的 権利者
1番 要役地地役権 承役地 〇〇
2番 抵当権設定 A 

地役権抹消

抵当権者⇒利害関係人である。

抵当権抹消

地役権の要役地所有者⇒利害関係人ではない。
※地役権の要役地所有者=登記権利者

地役権の承役地所有者⇒利害関係人ではない。

承役地所有者の利害関係

利害関係の範囲

前述の2つの事例において抵当権を抹消する場合、いずれにおいても承役地所有者は利害関係人に該当しない。

そもそも、承役地所有者は、抹消する抵当権の被担保不動産に係る登記名義人ではない。

それにも関わらず、承役地所有者が利害関係人に該当すれば、抹消する抵当権の被担保不動産以外の不動産の登記名義人も利害関係があるか否かを検討しなければならないことになる。

そうであれば、利害関係の有無の検討範囲はかなり広い。

この点、前述の先例(地役権抹消の際に、要役地地役権より後順位の抵当権者の承諾書が必要であるという登記先例)の見解からすると、利害関係人が広がることは容認されていると言える。

承役地所有者の利害関係

前述したとおり、要役地において、先順位が要役地地役権、後順位が抵当権の場合に、抵当権を抹消するときは、承役地所有者は利害関係人に該当しない。

しかし、この場合、本当に承役地所有者に利害関係はないのだろうか。

確かに、地役権の権利関係において、承役地は要役地の便益のために供されるものであるので、要役地の抵当権登記の有無は、承役地所有者に無関係とも思える。

しかし、地役権の設定契約契約に以下の特約がある場合はどうか。

「地役権は要役地と共に移転しない。」

仮に、上記特約があり、要役地地役権がある土地が抵当権実行により競売されれば、地役権は消滅する。

したがって、この場合、要役地の抵当権が抹消されるか否かは、承役地所有者にとって重大な関心事と言える。

但し、この利害関係は間接的・反射的な利害関係として不動産登記法上の承諾がいる利害関係とまでは言えないのかもしれない。

ここで、間接的・反射的な利害関係であることを理由に利害関係人に不該当という理屈が通れば、前述の先例(地役権抹消の際に、要役地地役権より後順位の抵当権者の承諾書が必要であるという登記先例)における利害関係も、間接的・付随的なものであるといえなくもない。そうであれば先例の整合性に疑義が残る。