相続人一人の数次相続による相続登記

遺産処分決定書

所有権登記名義人Aが死亡し、Aの共同相続人が、B(Aの配偶者)とC(Aの子)であるところ、Aの相続にかかる遺産分割未了のままBが死亡した場合、Aから直接Cへの所有権移転登記登記をすることはできない。( 平成25(行ウ)372処分取消等請求事件、平成26年3月13日)

なお、以前はCがAの不動産を直接取得した旨の「遺産処分決定書」を作成すればAから直接Cへ所有権移転登記ができた。

法定相続分

そのため、本件では被相続人をAとする所有権移転登記と、被相続人をBとするB持分全部移転登記を申請する。

1件目
登記の目的 所有権移転
原   因 年月日相続 ※Aの死亡日
相 続 人 (被相続人A)
持分2分の1 亡B
上記相続人 C
持分2分の1 C
課 税 価 格 固定資産税評価額の100%
登録免許税 課税価格の1000分の4

2件目
登記の目的 B持分全部移転
原   因 年月日相続 ※Bの死亡日
相 続 人 (被相続人B)
持分2分の1 C
課 税 価 格 固定資産税評価額の50%
登録免許税 課税価格の1000分の4

このように登記申請が2件になると、後述する1件の登記申請に比べて登録免許税が増える。

そのため、以前は前述の「遺産処分決定書」を作成し、AからCへ直接所有権移転登記をすることで登記申請を1件にする必要があった。

遺産分割協議証明書

もっとも、Aの死亡後にBC間で「Aの不動産をCが取得する」旨の遺産分割協議が成立した後にBが死亡した場合にはその旨の遺産分割協議証明書を作成すればAから直接Cへの所有権移転登記ができる。(法務省民二第154号平成28年3月2日)

この場合の遺産分割協議証明書にはCが実印を押印し、印鑑証明書を添付する。

1件目
登記の目的 所有権移転
原   因 年月日相続 ※Aの死亡日
相 続 人 (被相続人A)
C
課 税 価 格 固定資産税評価額の100%
登録免許税 課税価格の1000分の4

遺産分割協議証明書の文例

遺産分割協議証明書

被相続人Aの相続について共同相続人BCで年月日に遺産分割協議をして、Cが被相続人の不動産をすべて単独取得したことを証明する。

年月日 C

登録免許税

このように前述の「遺産分割協議証明書」を添付するか否かで登録免許税額が異なるので、Bの生前にBC間の遺産分割協議があったか否かを確認する必要性が高い。

もっとも、実務上このような事例、すなわち、BC間で遺産分割協議をしておきながら被相続人Aの所有権移転登記が未了である事例は稀である。

なぜなら、一般的な時系列では被相続人Aに関する遺産分割協議をした結果、所有権移転登記をするのではなく、被相続人A名義の不動産の所有権移転登記をするために遺産分割協議をすることが圧倒的に多いからである。

よって、前述の「遺産分割協議証明書」を使用して登録免許税を節税できるケースは少ないだろう。

もっとも、近年、租税特別措置法84条の2の3第1項の登場により土地については前述の登録免許税の問題が解消された。

すなわち、ある者が相続により土地を取得し、その後所有権移転登記をせずに死亡した場合のその者への移転登記は免税される。

租税特別措置法

(相続に係る所有権の移転登記等の免税)
第八十四条の二の三 個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和七年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。
2 個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和七年三月三十一日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が百万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。