オンライン申請総説
特例方式
電子証明書が普及していないので、特例方式によるオンライン申請が一般的に利用される。
特例方式の場合でも添付書類は法務局に提出する。
定義
このページ上の定義は下記のとおり。
オンライン:特例方式によるオンライン申請
書面:書面申請
証書:登記原因証明情報(登記義務者が記名・押印済)
識別:登記識別情報
電子納付:インターネットバンキングによる納付
印紙:収入印紙
オンライン申請の短所
登記原因証明情報のPDF添付
オンラインでは証書をスキャナーで取り込んだ上で申請情報に添付しなければならない
PDFの添付忘れは却下事由に該当する
オンラインをためらう最大の理由はこの却下のリスクの存在である
オンラインの場合、添付書類を申請から2日以内に法務局に提出すればよい
そのため、申請時点で登記原因の事実がないのに登記申請をし、受付番号だけをとる行為(いわゆる「カラ申請」)を防ぐ必要がある
そこで、申請時に証書のPDF添付を要求している
カラ申請の防止という趣旨だから、PDF添付した証書と法務局へ提出する証書原本は同一性がなければならないと解される
この同一性がない場合は、申請時にPDF添付していないことに等しいので却下の可能性がある
ただ、この同一性は一言一句相違がないことまで要求していない
よって、申請時にPDF添付のし忘れさえしなければ、証書の添付に起因する却下のリスクは低い
(そうはいっても、オンライン申請を推奨する法務局がPDFをつけ忘れたからと言って直ちに却下とするのは考えにくい)
では、前述の却下のリスクを回避するためにオンラインをしないのか
確かに、オンラインをしなければ前述のリスクを回避できる
しかし、それは登記申請の却下のリスクの1つに過ぎない
すなわち、書面申請においても却下のリスクはある
(例:連件の順番ミス、名変の入れ忘れ)
リスクを1つ追加してもなおオンラインにメリットがある場合はオンラインにするべきと考える
登記識別情報の入力
比較
オンラインでは識別の12桁の英数字を申請情報のフォーマットに打込み、申請情報に添付した上で送信する
もし入力した英数字に間違いがあれば補正通知がくるので、再度入力し直おした上で再送信する
これに対し、書面では識別のコピーを添付するのみ
書面ではこの入力作業の煩雑さがない点と入力ミスによる補正の手間のリスクがない点でオンラインより効率的である
但し、書面の場合は識別をコピーして封筒に入れる必要がある
(個人的にこの手間が煩雑)
対策
入力の手間と入力ミスのリスクを回避するのに、QRコードリーダー(以下、「リーダー」)を使用する方法がある
QRコード付きの識別の場合、リーダーでコードを読み取れば12桁の英数字のみならず、物件の特定情報(所在、地番など)も読み込んでくれる
つまり、物件ごとに受付月日、受付番号(順位番号)、12桁の英数字を入力する必要がない
これを使用すれば、QRコード付きの識別の入力の手間を省くことができ、入力ミスは起こらない
リーダーは1台あたり数万円で購入することができる
※リーダーの詳細は末尾のリンク参照
他の司法書士と連件申請の場合
司法書士が2人以上で連件する場合とは売買契約の決済の場面が想定される
地域によっては、抵当権抹消、所有権移転、抵当権設定について各々別々の司法書士が代理になることがある
甲と乙が連件申請をする場合
オンライン申請の長所
登録免許税
納付方法
オンラインは電子納付が可能(補正によって追加納付が必要な場合も電子納付が可)
また、登録免許税の超過納付の場合で1000円以下の既納付額を放棄する場合は、オンラインの補正書に「超過分を放棄する」旨を記載すれば窓口で放棄申請書を提出したり、申請書に放棄の旨を追記したりする必要はないと考えられる
これに対し、印紙で登録免許税を納付した場合、申請を取下げるときは再使用証明をするが、この手続きでは委任状が不要である
したがって、取下げのことを考えると、オンラインの場合に登録免許税を電子納付でなく、収入印紙で納付するメリットがあった
しかし、先例変更により、登記の委任状に、「登録免許税の還付請求手続きを申請人代理人に委任する」旨の記載があれば、前述の委任状の提出が不要となった
補正方法
補正の場合に、登記申請書に登録免許税の計算式(訂正後のもの)を記入しなければならないときがある
その場合は書面だと窓口で申請書を訂正する
ここで、計算方法を訂正を要する補正は登録免許税の煩雑な計算の場合であると想定されるが、それを補助者に任せるのは時間と手間がかかる
そうであればオンラインの画面で本職が補正申請書に訂正後の計算式を記入する方が早い
この時、登録免許税の過不足があっても、電子納付で済むので窓口にいく必要はない
現金の扱い
電子納付であればPC上の操作で納付手続きが完結する
印紙で納付する場合は、法務局で印紙を現金で購入することが多いと考えられるが、現金の取出し及び管理には、計算ミスや横領のリスクがある
ここで、補助者を信頼しているので横領の心配はないと思われる方は注意が必要
現金が不足した時に、補助者が横領をしていないとこと証明するのは不可能
したがって、本職(経営者)でなく、むしろ補助者のために大口の現金の受け渡しはさ避けるべきである
また、印紙の現金購入の場合は下記の手間がかかる(帳簿記入は電子の納付に比べて煩雑)
- 金庫から出金
- 出金伝票記載
- 印紙を購入
- 印紙を張り付け
郵送で送付
書面申請においては下記の理由で法務局へ出頭する必要がある
- 受領証の受領
- 収入印紙の購入・貼付の作業
- 申請日指定の登記申請
オンラインでは上記の作業を全てを事務所のPC上でできるので、上記のために法務局へ出頭する必要はない
添付書類を提出するだけであれば郵送で代替可能である
ここで、郵送費用はレターパックで510円
これに対し、補助者が法務局へ出頭すればその分の時給、ガソリン代が発生
法務局への出頭する機会を極力減らして外回りの時間を短縮することで浮いた時間を他の事務作業に充てることができれば、業務時間の短縮及び補助の肉体的負担の減少になる
受領証
窓口での待ち時間
オンラインの場合、受領証は画面上で受領できる
書面の場合は窓口で正本と同時に副本を提出し、受領印をもらう
窓口が混雑していれば受領証の受領に時間がかかる(その間補助者は法務局の受付窓口付近で待ちぼうけ)
これにかかる時間は累計すると看過できない
受領証をもらうのに1件当たり2分かかるとすると、30件では60分
つまり、30件の登記申請ごとに、時給1時間分の時間を受領証の待ち時間に費やすことになる
短時間労働のパートならば時給分の損失で済むが、正社員の場合は時給分の損失では済まない
すなわち、正社員の場合、1時間分の給料のみならず、それに対する社会保険料が発生していること、その半分を事業所が負担していることを忘れてはならない
朝一で受領証FAXの場合
朝一で金融機関に受領証をFAXする場合、書面申請であれば法務局へ申請後、直ちに事務所に戻りFAXする必要がある
その場合、補助者が他の官公署に遣いがあれば、受領証FAX後、再度外出することになるので効率が悪い
オンラインで受領証をPC上で受領し、FAXさえしてしまえば添付書類の提出は急ぐことではない(2日以内に持参か郵送)
登記完了の確認
オンライン申請の画面で登記の完了を確認できる
事後謄本が必要な場合は画面上で完了を確認すれば即座に乙号申請可能
書面申請であれば窓口で確認後、書面申請で乙号請求か、オンラインで請求となる
書面で乙号申請であれば印紙を購入する手間が発生し、手数料が割高になる
書面で申請後、オンラインで乙号請求ならば、その場で請求できない
また、登記の進捗状況をPC画面で一元的に管理できる点からもオンラインの優位性がある