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犯罪による収益の移転防止に関する法律と司法書士業務

犯罪による収益の移転防止に関する法律の概要

制度趣旨

犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、「法」)は犯罪収益の移転による下記を防止するために制定された。

  • 組織的な犯罪を助長する。
  • 健全な経済活動に悪影響を与える。
  • 被害回復を困難にする。

規制対象

法の規制を受ける事業者を特定事業者呼ぶ。

司法書士は特定事業者である(法2条2項44号)。

届出

特定事業者は、特定業務に係る取引について、犯罪による収益である疑いがあるかどうかなどを判断し、これらの疑いがあると認められる場合においては、速やかに、行政庁に届け出なければならない。

但し、司法書士にはこの届出義務は無い(法8条1項)。


犯罪による収益の移転防止に関する法律の用語

顧客

司法書士業務における顧客とは委任者や依頼者をいう。

そして、不動産登記業務における顧客とは委任者である登記権利者と登記義務者をいう。

また、依頼者が会社の場合には株式会社だけでなく、持分会社も顧客となる。

代表者等

代表者等とは、顧客が法人の場合に「現に特定取引等の任に当たっている自然人」(法4条4項)をいう。

「現に特定取引等の任に当たっている自然人」とは実際に依頼の交渉にあたっている者いう。

そのため、代表者等に該当するのは任意代理人や法定代理人に限られない。

すなわち、「現に特定取引等の任に当たっている自然人」であれば従業員でも代表者等に該当する。

「現に特定取引等の任に当たっている自然人」かの確認方法は不動産登記であれば登記にかかる業務権限証書の提示を受ける方法がある。

特定業務

特定業務とは犯罪収益移転防止法4条1項に規定される業務である。

特定業務を行うと取引記録等の作成義務(法7条1項)の義務が生じる。

特定受任行為

特定受任行為とは次に掲げる行為又は手続(政令で定めるものを除く。)についての代理又は代行である。

  1. 宅地又は建物の売買に関する行為又は手続
  2. 会社の設立又は合併に関する行為又は手続その他の政令で定める会社の組織、運営又は管理に関する行為又は手続(会社以外の法人、組合又は信託であって政令で定めるものに係るこれらに相当するものとして政令で定める行為又は手続を含む。)
  3. 現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分(前二号に該当するものを除く。)

「特定受任行為」の例は宅地建物売買に基づく所有権移転登記手続きである。

犯罪収益移転防止法別表(第四条関係) 第二条第二項第四十六号に掲げる者

司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条若しくは第二十九条に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務のうち、顧客のためにする次に掲げる行為又は手続(政令で定めるものを除く。)についての代理又は代行(以下この表において「特定受任行為の代理等」という。)に係るもの
一 宅地又は建物の売買に関する行為又は手続
二 会社の設立又は合併に関する行為又は手続その他の政令で定める会社の組織、運営又は管理に関する行為又は手続(会社以外の法人、組合又は信託であって政令で定めるものに係るこれらに相当するものとして政令で定める行為又は手続を含む。)
三 現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分(前二号に該当するものを除く。)

特定受任行為の代理等

「特定受任行為の代理等」とは例えば宅地建物売買に基づく所有権移転登記手続きの代理である。

特定受任行為の代理等を行った場合には取引記録等の作成義務(法7条2項)の義務が生じる。

特定取引

特定取引とは取引時確認を行わなければならない取引である。

司法書士業務における特定取引とは「特定受任行為の代理等を行うことを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引」である。

例えば司法書士が宅地建物売買に基づく所有権移転登記手続きの代理を受任することは特定取引にあたる。

特定取引等

特定取引等とは特定取引(法4条1項)とハイリスク取引(法4条2項)をいう。

取引時確認

取引時確認とは本人特定事項を確認することである。

本人特定事項とは次のものである。

顧客が自然人の場合

  • 氏名
  • 住居
  • 生年月日

顧客が法人の場合

  • 名称
  • 本店又は主たる事務所

また、顧客が法人の場合には顧客の代表者等である自然人についても下記を確認する。

  • 氏名
  • 住居
  • 生年月日

取引時確認により本人が実在性と本人の同一性を確認するとされている。

確認記録

取引時確認に係る記録(法6条1項)である。確認記録は7年保存する(法6条2項)。

取引記録等

取引記録等とは司法書士業務の場合、特定受任行為の代理等を行った場合に作成されるものである。

その中身は顧客等の確認記録を検索するための事項、当該特定受任行為の代理等を行った期日及び内容その他の主務省令で定める事項に関する記録である(法7条3項、2項)。

取引記録等は7年保存である(法7条3項)。

司法書士の義務

取引時確認

司法書士が、「特定受任行為の代理等を行うことを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引」を行うに際しては本人特定事項の確認を行わなければならない(法4条)。

この本人特定事項の確認を取引時確認という(法4条6項)。

確認記録の作成

取引時確認をした場合は、直ちに法令に定める事項を記載した記録を作成しなければならない(法6条1項)。

この記録を確認記録という。

確認記録の保存

確認記録は7年間保存しなければならない(法6条2項)。

取引記録等の作成

特定受任行為の代理等を行った場合は、下記に関する記録を作成しなければならない(法7条2項)。

  • 顧客等の確認記録を検索するための事項
  • 当該取引の期日及び内容
  • その他の主務省令で定める事項

この記録を取引記録等という(法7条3項)。

取引記録等の保存

取引記録等は7年間保存しなければならない(法7条3項)。