事務用品紹介

司法書士事務所の独立開業の手引き

事務所名

個人で司法書士事務所を開業する場合には事務所名を決める必要はありません。この場合には「司法書士何某事務所」となります。個人名ではない事務所名をつけたいと考えるかもしれませんが、それは避けるべきしょう。なぜなら、個人事務所の場合、依頼は司法書士個人に来ますが、個人名と事務所名が異なると単純にややこしいからです。

また、事務所名がある場合、職務上請求書には司法書士の個人名と事務所名を書かなければなりません。

さらに、請求書に事務所名を載せるかという問題が発生します。請求書に事務所名を記載していなくても問題はありませんが、事務所名、すなわち屋号を載せない請求書は一般的に奇妙です。

では、司法書士の個人名と異なる事務所名をつける場合とはどのような場合か説明します。それは共同事務所や司法書士法人の場合で、司法書士個人ではなく、共同事務所・司法書士法人に依頼が来ると想定される場合です。

すなわち、共同事務所や司法書士法人の場合、司法書士複数人単位で対応しますので事務所名に司法書士の個人名を付けない方が都合がいいのです。

どういうことかというと、例えば「司法書士田中一郎事務所」と名乗った場合に、依頼者の相談を司法書士田中一郎が受けず別の司法書士が受けると、依頼者から「司法書士田中一郎が相談に乗ってくれるのではないか」という意見が出る可能性があるからです。

これに対し例えば「ひまわり司法書士事務所」という看板でやればこのような意見は基本でません。

また、親子で司法書士事務所を経営している事務所は親と子どちらでも対応できるように氏だけの事務所名をつけていることがあります。

司法書士事務所決め

事務所所在地の確定

初めにすることは事務所決めです。

事務所所在地が決まらなければ、司法書士の登録申請ができません。

登録を急ぐのであれば、仮の事務所所在地で登録申請をするのもありですが、登録後、事務所の変更登録には手数料がかかりますので、注意です。

また、都道府県をまたいで事務所所在地を変更すれば、既存の司法書士会を脱退し、新たな管轄司法書士会で再度入会手続きになります。

この場合、入会金は多額であり、変更登録に時間も要します。

仮の事務所所在地で登録する場合は、同一都道府県内で移動することを前提にします。

司法書士事務所の間取り

司法書士事務所の広さは20㎡程度あれば十分です。

事務所に置くものは以下の通り。

  • 事務机・椅子
  • PC
  • 複合機
  • 本棚
  • 応接机・椅子

最初から広い事務所にしても場所を持て余すだけです。

書籍等は自宅に保管すればよいです。

司法書士事務所立地

事務所は目立つ場所にあるに越したことはありません。

また、地方では駐車場のスペースや車の止めやすさも重要です。

しかし、これらにこだわれば当然家賃も高くなります。

家賃は毎月の固定費であり、経費の大部分を占めます。

事業収支計画を作成し、家賃の上限を決めてから事務所を選ぶのがよいと思います。

司法書士独立開業の準備

流れ

1
事務所決め
事務所を置くテナントを借ります。テナントの契約は、申込みから入居まで1か月程度かかかります。

2
登録申請
司法書士会に行って登録関係の書類をもらいます。同時並行で戸籍・住民票を取得、職印の注文、写真撮影(会員証用)をします。

写真はスーツで撮影します。会員証は役所の窓口で提示するので私服の写真だと恥ずかしいです。髪型もセットしましょう。

3
七つ道具手配
七つ道具を準備します。司法書士の登録申請から会員証交付までは時間がかかります(期間は司法書士連合会の登録審査会の日程次第)。登録申請と同時並行で準備をするとよいです。 司法書士事務所の七つ道具司法書士事務所の七つ道具

4
登録完了
会員証交付式に出席し会員証をもらえたら、いよいよ開業です。ここですぐに電子証明書を請求します。また、登記情報と登記ネットにも登録します。

5
業務開始
税務署に開業届と青色承認申告書を提出、司法書士の保険契約、銀行口座開設します。

司法書士(士業)とホームページ

職印

登録の申請の際に職印が必要です。

早めに発注しましょう。

注意
刻印する文字や大きさは登録申請書の付属書類で確認する。

職印のサイズですが18mmがおすすめです。

大きすぎると書類に押しにくい上、見栄えが悪いです。

PC(パソコン)のスペック

CPUはIntelのCore i5以上が無難です。

なお、i5でも昔のものは性能が落ちるので、最新のPCを購入してください。

メモリ(RAM)やストレージに関しては、CPUで大体決まるので、そこまで気にしなくてよいかと思います。(例えば、CPUがi7であれば、メモリは8GBとかで、それ相応のものがついています。)

なお、法務省の申請用総合ソフトがMACに対応していないので、MACはだめです。

また、CPUにつき、AMD Ryzenが申請用総合ソフトとの相性が不明です。

よって、現状ではIntelのCore i5以上にするのが無難です。

業務支援ソフト

業務支援ソフト(以下、ソフト)を導入する場合は開業準備段階で導入しましょう。

まだそこまでと思う人は開業後でOKです。

ソフトについては下記を参照。

司法書士の業務支援ソフト導入司法書士の業務支援ソフト導入

ホームページ

司法書士(士業)とホームページ

司法書士事務所開業資金

主な使い道

  • 司法書士登録費用(15万円程度)
  • 事務所契約の初期費用
  • 一定の運転資金(登録免許税立替分等)
  • パソコン、コピー機の費用(一括購入する場合)
  • 机・椅子・看板等の費用

いくらいるか

司法書士は事務所と機材(パソコン、コピー機等)があれば始められます。

開業することが目的であればその分のお金さえ貯金すれば(借入すれば)十分です。

むしろ検討すべきは開業後の生活費と事業経費です。

POINT
いくらで開業できるかではなく、生活費と事業経費がいくらかかるか。

そこで事業計画を練りましょう。

  1. 月々の生活費(食費、住居の家賃、趣味等)を計算
  2. 月々の事業経費(司法書士会費、事務所の家賃等)を計算※1
  3. 月々の売上の予測→これが難しい
  4. 開業後、何ヵ月目から経費を賄える売上がでるか
  5. 開業後、何ヵ月目から生活費+経費分を賄える売上がでるか→ここまできてやっと貯金切り崩し生活から脱出

※1 借入をするならば返済予定額も考慮します。(金融機関でチェックされます。)

売上の予測

予測すると言っても

事業計画における売上の予測は難しいです。

予測というより希望的観測です。

この業者から仕事がくると思っていても来なかったり、逆にひょんなことから仕事が舞い込んだりします。

そもそも売上が保証されている商売はありません。

そのような商売があれば私はすぐにでもそれを始めます。

予測する目的

一般的に事業計画において売上を予測する主な目的は売上の上限を把握するためだと思います。

例えばカフェを開店する際、下記の設定で始めるとします。

  • 店内10席
  • 客単価平均500円
  • 回転数は1日3回転

1日中ずっと満席であっても、売上は15,000円(10席×500円×3回転)がMAXです。

仮に事業計画において1日の売上を20,000円に設定していれば、その事業計画は見直す必要があります。

いくら人気が出てもこの設定で1日20,000円の売上を出すのは現実的ではありません。

司法書士の場合

おおまかでいいので下記を検討するとよいと思います。

  • 月に何件依頼があるか
  • 依頼の報酬の平均

開業前から宅建業者、工務店、税理士などからの依頼を見込めれば、それも考慮します。

独立する前の勤務経験

勤務経験の要否

独立する前に勤務する必要があるか、という問題ですが、結論から言うと、どちらでもよいです。

ただ、勤務経験はあるに越したことはないです。

例えば家業が司法書士業を営んでいれば、勤務経験は不要でしょう。

実務でわからないことがあっても教えてくれる人がいるからです。

もっとも、司法書士の「実務をする上で」不要というだけです。

というのも、今後自分が補助者を雇用する場合、自分の補助者経験は経営において重要な財産となるからです。

また、未経験で独立する場合、登録の際に所属の司法書士会から配属研修を課されます。配属研修とは開業前に一定期間地元の司法書士事務所でタダ働きすることです。

さらに、実務でわからないことがあっても、知り合いの先輩に聞けば大抵教えてくれます。

勤務経験の期間

独立前にい勤務するとしてどのくらい勤務期間が必要かというと、1年間くらいあれば十分です。

そして、長ければ長いほどよいかと言うとそうではありません。

開業すれば実務の能力を磨くことだけでなく、仕事をとってくる必要があります。

勤務期間中に自分に仕事が来るようにするは困難です。

これに対し、勤務期間が長ければ実務経験が積めてよいと思うかもしれません。

しかし、これは大きな間違いです。実務では常にわからないことに遭遇します。要は問題に直面した際に自分で調べて解決策を見つけ出すが開業した者の仕事なのです。

勤務で経験を積んでも、定型の業務しかしていなければ、定型の業務の処理能力が上がっても、経験したことない業務への対応能力は身に付きません。

そこで、勤務として未知の問題を対応すればよいのですが、司法書士事務所で勤務司法書士を雇うのは、勤務司法書士に定型業務をやらせるためのことが多いので、そのような経験ができる事務所は少ないのです。

但し、身に着けておくべき最低限の知識・能力はあるので、それらを習得するのには1年間あれば十分という話です。

最低限でない知識・経験(例えば、債務整理、債権譲渡登記、相続財産管理人業務など)は開業してから自分で調べながらこなしていけば十分です。

いくら勤務経験を積んでも、どのみちすべての実務を把握することはできないのです。