登記識別情報に関する証明請求と登記識別情報通知・未失効照会

登記識別情報に関する証明請求

登記識別情報に関する証明請求とは、登記識別情報が有効であることの証明その他の登記識別情報に関する証明の請求である(不動産登記令22条1項)。

そして、「その他の登記識別情報に関する証明」とは、登記識別情報が通知されていないこと又は失効していることの証明(不動産登記事務取扱手続準則40条)である。

登記識別情報が有効であることの証明は俗に「登記識別情報の有効証明」と、登記識別情報が通知されていないこと又は失効していることの証明は俗に「登記識別情報の未失効証明」と呼ばれる。

不動産登記令

(登記識別情報に関する証明)
第二十二条 登記名義人又はその相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、登記識別情報が有効であることの証明その他の登記識別情報に関する証明を請求することができる。
2 法第百十九条第三項及び第四項の規定は、前項の請求について準用する。
3 前二項に定めるもののほか、第一項の証明に関し必要な事項は、法務省令で定める。

請求権者

登記識別情報に関する証明請求は登記名義人又はその相続人その他の一般承継人に認められる請求である(不動産登記令22条1項)。

そのため、代理人が登記識別情報に関する証明請求をするには登記名義人又はその相続人その他の一般承継人の委任が必要である。

同じく資格者代理人たる司法書士が登記識別情報に関する証明請求する際には登記名義人又はその相続人その他の一般承継人の委任が必要である。

もっとも、資格者代理人たる司法書士が登記識別情報に関する証明請求する際には委任状の「添付」は不要である(不動産登記規則68条7項、不動産登記令7条1項2号)。

手数料

登記識別情報に関する証明請求の手数料は300円/1件である。

電子署名

登記識別情報に関する証明請求書には電子署名が必要である。

公文書発行

登記識別情報に関する証明請求の回答は公文書により発行される。

有効証明の回答

有効証明の請求がなされた場合の回答は次のとおりである。

  1. 提供された登記識別情報が請求に係る登記についてのものであり、かつ、失効していないとき。
    請求に係る登記を表示した上、「上記の登記について令和何年何月何日受付第何号の請求により提供された登記識別情報は,当該登記に係るものであり,失効していないことを証明する。」
  2. 請求に係る登記があり、かつ、当該登記の登記名義人についての登記識別情報が失効していないが、当該登記の登記名義人についての登記識別情報と提供された登記識別情報とが一致しないとき。
    「上記の登記について令和何年何月何日受付第何号の請求により提供された登記識別情報は,正しい登記識別情報と一致しません。」
  3. 請求に係る登記があるが、当該登記の登記名義人についての登記識別情報が通知されず、又は失効しているとき
    「上記の登記に係る登記識別情報が通知されず,又は失効しています。」
  4. 請求に係る登記があるが、請求人が登記名義人又はその一般承継人であることが確認することができないとき。
    「別添の請求番号何番の登記に係る令和何年何月何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求人は,請求人としての適格があると認められません。」
  5. 請求に係る登記がないとき。
    「別添の請求番号何番の登記に係る令和何年何月何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求に係る登記はありません。」
  6. 前各号の場合以外の理由により証明することができないとき。
    これらの例にならって、例えば、登記手数料の納付がないなど具体的な理由を認証文に示して明らかにするものとする。

不通知・失効証明の回答

不通知・失効証明の請求がなされた場合の回答は次のとおりである。

  1. 請求に係る登記の登記名義人についての登記識別情報が通知されず、又は失効しているとき。
    請求に係る登記を表示した上、「上記の登記に係る登記識別情報が通知されず,又は失効しています。」
  2. 請求に係る登記があるが、当該登記の登記名義人についての登記識別情報が通知され、かつ、失効していないとき。
    「上記の登記に係る令和何年何月何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,次の理由により,証明することはできません。当該登記に係る登記識別情報が通知され,かつ,失効していません。
    注)この証明は,上記請求において登記識別情報が提供されていないため,当該登記に係る登記識別情報が通知され,かつ,失効していない事実のみを証明するものであり,特定の登記識別情報が当該登記に係る登記識別情報として有効であることを証明するものではありません。」
  3. 請求に係る登記があるが、請求人が登記名義人又はその一般承継人であることが確認することができないとき。
    「別添の請求番号何番の登記に係る令和何年何月何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求人は,請求人としての適格があると認められません。」
  4. 請求に係る登記がないとき。
    「別添の請求番号何番の登記に係る令和何年何月何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求に係る登記はありません。」
  5. 前各号の場合以外の理由により証明することができないとき。
    これらの例にならって、例えば、登記手数料の納付がないなど具体的な理由を認証文に示して明らかにするものとする。

有効証明と不通知・失効証明の違い

登記識別情報の提供

有効証明は登記識別情報の提供が必要だが、不通知・失効証明は登記識別情報の提供は不要である(不動産登記規則68条2項)。

不通知又は失効している場合

登記識別情報が通知されず、又は失効している場合、有効証明と不通知・失効証明の回答に差は出ない。

通知されかつ失効していない場合

逆に登記識別情報通知され、かつ失効していない場合、有効証明と不通知・失効証明の回答に差が出る。すなわち、有効証明を請求する実益が出る。

具体的には、不通知・失効証明は照会対象の登記識別情報が通知されかつ失効していないことのみを回答する。

これに対し、有効証明は照会対象の登記識別情報が通知されかつ失効していないこと加えて、提供された登記識別情報が正しいか否かも回答する。

選択

有効証明の請求は登記識別情報を保持していなければできないのでそもそも請求できる場面が限られる。

では、登記識別情報を保持している場合に、どのようなときに有効証明の請求する実益があるかを検討する。

次の場合には「目隠しが剥がされていない登記識別情報通知の原本保持するとき」に比べて有効証明の請求をする必要性が高いだろう。

  • 目隠しが剥がされた状態の登記識別情報通知の原本を保持するとき
  • 目隠しが剥がされた状態の登記識別情報通知のコピーを保持するとき
  • 目隠しが剥がされた状態の登記識別情報通知の画像データを保持するとき
  • 登記識別情報の英数字が書かれた紙やデータを保持するとき

なぜならこれらの場合には「目隠しが剥がされていない登記識別情報通知の原本保持するとき」に比べて、登記識別情報の英数字の改ざんが疑われるからである。

登記識別情報通知・未失効照会

登記識別情報通知・未失効照会とは、登記識別情報が通知されていないこと又は失効していることの証明(いわゆる未失効証明)請求を簡略化した請求である。

登記識別情報通知・未失効照会の最大の特徴は回答までの時間の短さである。

請求権者

登記識別情報通知・未失効照会は登記識別情報に関する証明請求と異なる請求であると解され、請求権者に制限はないと考えられる。しかし、明確な根拠は見当たらない。

なお、後述のとおり、登記識別情報通知・未失効照会し、「照会内容から登記事項が特定できない場合」には次の回答がなされる。

「照会された登記については,「登記識別情報に関する証明請求書」での請求を行ってください。」

よって、この回答の言い回しから、登記識別情報通知・未失効照会は登記識別情報に関する証明請求と異なる制度であると推認できる。

手数料

登記識別情報通知・未失効照会には手数料はかからない。

電子署名

登記識別情報通知・未失効照会のする際に電子署名は不要である。

公文書不発行

登記識別情報通知・未失効照会の回答につき公文書発行はなされない。

登記識別情報通知・未失効照会の回答

  1. 照会に係る登記事項に記録された全ての登記名義人の登記識別情報が通知され,有効な場合。
    「当該登記に係る登記識別情報が通知され,かつ,失効していません。」
  2. 照会に係る登記事項に記録された全ての登記名義人の登記識別情報が通知され,かつ,失効している場合又は不通知である場合。
    「当該登記に係る登記識別情報が通知されず,又は失効しています。」
  3. 照会に係る登記事項に記録された登記名義人が複数存在する場合に,その一部の登記名義人について, 登記識別情報の状態が通知され,かつ,失効している場合又は不通知である場合。
    「当該登記に係る登記名義人の一部において登記識別情報が通知されず,又は失効しています。」
  4. 請求に係る物件が特定できない場合,又は請求に係る登記事項が存在しない場合。
    「照会に係る登記はありません。」
  5. 公売や競売等により,同一の受付年月日及び受付番号の登記事項が甲区又は乙区に複数存在するため,照会内容から登記事項が特定できない場合。
    「照会された登記については,「登記識別情報に関する証明請求書」での請求を行ってください。」

欠点

登記識別情報通知・未失効照会は「同一の受付年月日及び受付番号の登記事項が甲区又は乙区に複数存在する」場合には回答がなされない。この場合には登記識別情報に関する証明請求することになる。