建売住宅の登記業務

建売住宅の登記の流れ

手順1
土地・建物購入
手順2
新築建物へ住所を移す
手順3
建物表題登記
手順4
融資実行・登記
 

依頼者

購入者

購入者は司法書士を指定することができる。しかし、建物所在地と司法書士事務所が遠方の場合には諸般の事情で司法書士が断ることが多いだろう。

工務店

建売住宅は工務店紹介の司法書士が登記をする場合が圧倒的多い。

金融機関

建売住宅の場合に金融機関の紹介の司法書士が登記をすることは想定しづらい。

土地家屋調査士

土地家屋調査士の紹介で登記をすることはほぼないだろう。

申請する登記

所有権登記名義人住所変更登記

土地所有者である工務店の本店が移転している場合には所有権登記名義人住所変更登記が必要である。

建売住宅の登記では稀である。

所有権移転登記

工務店から購入者への土地の所有権移転登記を申請する。

建物敷地とは別に侵入路やごみ置き場などの共有持分を移転することがある。

所有権保存登記

抵当権設定登記の前提として建物の所有権保存登記を申請する。

所有権保存登記においては住宅用家屋証明書を添付して登録免許税の減税を受ける。

ところで、建売住宅販売においては、売主たる工務店が建物を建築し、購入者に売り渡す流れをとる。そのため、本来であれば工務店を建物の原始取得者、購入者を特定承継者とする次の登記を申請すべきである。

  1. 工務店を所有者とする建物表題登記
  2. 工務店を所有権登記名義人とする所有権保存登記
  3. 工務店から購入者への売買を登記原因とする所有権移転登記

しかし、このような登記では工務店に不動産取得税や登録免許税が発生する。そこで、実務上は次の登記を申請する。

  1. 購入者を所有者とする建物表題登記
  2. 購入者を所有権登記名義人とする所有権保存登記

この登記申請は注文住宅の場合と同じである。よって、注文住宅と建売住宅では建物表題登記及び所有権保存登記後の登記事項証明書に差異は生じない。

抵当権設定登記

建物と土地に抵当権設定登記を申請する。

抵当権設定登記においても住宅用家屋証明書を添付して登録免許税の減税を受ける。

根抵当権設定仮登記抹消登記

土地の売主たる工務店を債務者とする根抵当権が設定してあれば抵当権設定登記の前提として抹消する。

見積書の作成

工務店や金融機関から見積書の提出を求められる。この見積書を間違えても後で修正はきかないので注意する。

見積書を作成する場合は次の二点がポイントとなる。

  1. 登記の申請件数
  2. 登録免許税

1は所有権移転登記で、2は所有権保存登記で問題となりやすい。

所有権移転登記

土地の所有権移転登記は租税特別措置法の適用があり、税率は1000分の15である。

また、侵入路やごみ置き場などの共有持分移転、すなわち〇〇持分移転一部移転の場合、登記申請が2件以上になる。

所有権保存登記

一般に不動産の課税価格とは固定資産税の評価額である。しかし、所有権保存登記を申請する時点では建物の評価額は算定されていない。

そこで、管轄法務局の「新築建物課税標準価格認定基準表」で建物の課税価格を算出する。

また、所有権保存登記の登録免許税は、特定認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、これら以外の住宅で税率が異なる。

  • 特定認定長期優良住宅 1000分の1(租税特別措置法74条)
  • 認定低炭素住宅 1000分の1(租税特別措置法74条の2)
  • 上記以外の住宅 1000分の1.5(租税特別措置法72条の2)

手順は次のとおり。

  1. 建物の種類と構造を確認し、管轄法務局の「新築建物課税標準価格認定基準表」で建物の1平方メートルあたりの単価を出す。
  2. 建物の床面積を確認し、1の単価に床面積を乗じて課税価格を算出する。
  3. 住宅用家屋証明書で該当する住宅を確認し、租税特別措置法で税率を出す。
  4. 課税価格と税率から登録免許税額を算出する。

なお、見積書依頼時点で建物表題登記が未了の場合には建物建築確認済証記載の情報で課税価格を算出する。しかし、確認済証の床面積と、登記される床面積には誤差がある。

抵当権設定登記

抵当権設定登記の申請件数は基本1件である。ペアローンの場合には2件である。

また、建物敷地と併せて侵入路やごみ置き場などの共有持分に抵当権を設定する場合も登記申請は1件である。

登録免許税につき、住宅用家屋証明書を添付するする場合には税率は1,000分の1である。

また、金融機関に債権額が変更になった場合は連絡するよう伝えておく。

住宅用家屋証明書の取得

住宅用家屋証明書を取得する場合にはこれについても見積書に計上する。

住宅用家屋証明書発行手数料は市町村によって異なる。

登記事項証明書

登記完了後は金融機関に不動産の登記事項証明書を提出する。これは本来であれば注文者がするべきことだが、司法書士が代わりに取得するのが一般的である。

登記情報

抵当権設定登記の申請前に不動産の登記情報を取得するからその費用も計上する。

必要書類

委任状

建物表題登記を担当する土地家屋調査士が優秀な場合、所有権保存登記及び住宅用家屋証明書の委任状は土地家屋調査士が取得してくれることがある。

抵当権設定登記の委任状及び土地の登記識別情報は金融機関経由でもらえるが、念のため事前に金融機関に確認する。

土地の所有権移転登記の委任状と登記原因証明情報と建物未使用証明書は依頼者たる工務店からもらう。

建物未使用証明書は下記を参照

住民票

建物表題登記で住民票を使用しているので土地家屋調査士からもらう。

印鑑証明書

金融機関でもらう。

住宅用家屋証明書

住宅用家屋証明書は司法書士が取得することが多い。

住宅用家屋証明書とは個人の建物が住宅用の家屋であることを証明するものである。住宅用家屋証明書は建物所在地を管轄する市町村が発行する。