総説
戸籍は個人の相続関係を疎明するために使用されることが多い。そして、相続関係は民法によって定められる。そのため、その時代の民法によって戸籍法は改正され、その結果戸籍の体裁はかわる。
法改正などにより戸籍の体裁がかわることを「改製」という。
戸籍の種類は大きく次のように分類できる。
- 明治5年式戸籍(壬申(じんしん)戸籍)
- 明治19年式戸籍
- 明治31年式戸籍
- 大正4年式戸籍
- 昭和23年式戸籍
- コンピュータ化
この番号は時代の流れに沿った番号である。改製によって番号が次順位に移行する。
例えば改製により2から3へ移行することもあれば、2から3をとばして4へ移行することもある。
改製がなされると改製元の戸籍と改製後の戸籍に「移行した旨」が記載される。この「移行した旨」の記載、すなわち、改製がなされたことを表現する文言は戸籍の種類ごとに異なる。
また、改製元の戸籍は改製後の戸籍に対して「改製前原戸籍」と呼ばれる。注意すべきは「改製前原戸籍」は絶対的な名称ではなく、改製後の戸籍に対する相対的な名称であることだ。
ところで、現時点で故人の出生から死亡までの戸籍を間断なく取得する場合、その戸籍は数種類にまたがっていることが大半である。そこで、改製前原戸籍と改製後の戸籍の「移行した旨」の記載を確認することで必要な戸籍を間断なく収集することができる。
ここではそれぞれの戸籍の特徴と、改製がなされたことを表現する文言について解説する。
明治5年式戸籍(壬申(じんしん)戸籍)
明治5年式戸籍は、明治5年2月1日から明治19年10月15日までに作られた戸籍である。
この戸籍は施行の年の干支から「壬申戸籍」と言われた。
この戸籍には華士族と平民の別などの他、職業、犯罪歴などの一般公開に適さないものがある。そのため、この戸籍は現在は公開されておらず、取得できない。
明治19年式戸籍
明治19年式戸籍は明治19年10月16日から明治31年7月15日までに作られた戸籍である。
改製後の記載(明治19年式戸籍に記載)
明治5年式戸籍を明治19年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「明治25年11月10日許可を得て改製」
この文言は改製後の戸籍(明治19年式戸籍)に記載される。
改製原戸籍の記載(明治19年式戸籍に記載)
明治19年式戸籍を明治31年戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「明治35年12月6日司法大臣の許可を得て改製」
明治19年式戸籍を大正4年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「昭和22年12月23日改製に付本戸籍を抹消す」
この文言は改製前の戸籍(明治19年式戸籍)に記載される。
明治31年式戸籍
明治31年式戸籍は明治31年7月16日から大正3年12月31日までの間に作られた戸籍である。
また、戸籍簿の他に身分登記簿の制度を設けた。しかし、身分登記簿はあまり利用されることなく、大正3年戸籍法の施行とともに廃止された。なお、相続登記の際に身分登記簿を収集調査することはない。
戸主ト為リタル原因及ヒ年月日の欄
明治31年式戸籍には「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」という欄が存在する。
この欄は明治31年式戸籍特有の欄であり、家督相続の年月日が記載されている。これによりこの戸籍がいつ家督相続によって作られたかを知ることができる。
改製後の記載(明治31年式戸籍に記載)
明治5年式戸籍を明治31年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「明治33年7月29日司法大臣の許可を得て改製」
明治19年式戸籍を明治31年戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「明治35年12月6日司法大臣の許可を得て改製」
この文言は改製後の戸籍(明治31年式戸籍)に記載される。
改製原戸籍の記載(明治31年式戸籍に記載)
明治31年式戸籍を大正4年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「昭和14年4月1日改製に付本戸籍を抹消す」
この文言は改製前の戸籍(明治31年式戸籍)に記載される。
大正4年式戸籍
大正4年式戸籍は大正4年1月1日から昭和22年12月31日までの間に作られた戸籍である。
この戸籍制度では前述の身分登記簿を廃止し戸籍簿と一本化された。
明治19年式戸籍については、大正4年式戸籍に改製すべき旨が規定され(旧戸185条)、明治31年式戸籍については、市町村の上申に基づき司法大臣の命令を得て大正4年式戸籍に改製できるものとされた(旧戸184条2項)。
改製後の記載(大正4年式戸籍に記載)
明治19年式戸籍を大正4年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「司法大臣の命に依り昭和22年12月23日本戸籍を改製す」
明治31年式戸籍を大正4年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「司法大臣の命に依り昭和14年4月1日本戸籍を改製す」
この文言は改製後の戸籍(大正4年式戸籍)に記載される。
改製原戸籍の記載(大正4年式戸籍に記載)
大正4年式戸籍を昭和23年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「昭和34年4月2日改製につき本戸籍消除」
又は
→「昭和32年法務省令第27号により昭和34年4月2日本戸籍改製」 、「昭和32年法務省令第27号により昭和36年6月15日あらたに戸籍を編製したため本戸籍消除」※簡易改製の場合
この文言は改製前の戸籍(大正4年式戸籍)に記載される。
大正4年式戸籍を昭和23年式戸籍に改製したときの文言は2パターンに分かれる。これは後述の簡易改製がなされた影響である。
昭和23年式戸籍
昭和23年から作られた戸籍である。
改製後の記載(昭和23年式戸籍に記載)
大正4年式戸籍を昭和23年式戸籍に改製したときの戸籍に記載された文言の例
→「昭和32年法務省令第27号により昭和34年4月2日改製昭和34年4月2日同所同番地何某戸籍から本戸籍編製」
又は
→「昭和32年法務省令第27号により昭和34年4月2日改製につき昭和36年6月15日本戸籍編製」※簡易改製の場合
この文言は改製後の戸籍(昭和23年式戸籍)に記載される。
前述のとおり、大正4年式戸籍を昭和23年式戸籍に改製したときの文言は2パターンに分かれる。これは後述の簡易改製がなされた影響である。
簡易改製
大正4年式戸籍から昭和23年式戸籍への改製には膨大な事務作業が必要であり、処理が追い付かなかった。
そこで、大正4年式戸籍のうち、親子二世代で構成されている戸籍を暫定的に昭和23年式戸籍とみなし、大正4年式戸籍を流用した。これを「簡易改製」という。
改製原戸籍の記載(昭和23年式戸籍に記載)
昭和23年式戸籍をコンピュータ化改製したときの戸籍に記載された文言の例
→平成六年法務省令第五十一号附則第二条第一項による改製につき平成十六年三月六日消除
この文言は改製前の戸籍(昭和23年式戸籍)に記載される。
コンピュータ化
昭和23年式戸籍は紙で作成・管理されていたが、戸籍の情報をデータ化し、コンピュータで管理・運用していくために改製された。
改製後の記載(コンピュータ化戸籍に記載)
昭和23年式戸籍をコンピュータ化改製したときの戸籍に記載された文言の例
→戸籍事項 戸籍改製 【改製日】平成16年3月6日 【改製事由】平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製
この文言は改製後の戸籍(コンピュータ化戸籍)に記載される。