目次
株式会社設立の流れ
定款作成日
定款認証を受けるにあたっては定款作成日を決めるが、この作成日は特別な理由がなければ資本金の入金日と同日にしておけばよい。
なお、令和4年6月13日民商286号先例が発令されるまでは定款作成日・定款認証日・資本金入金日との整合性について注意点が存在した。
定款作成日や資本金入金日についてはこちらの記事を参照。
払込時期の緩和
令和4年6月13日民商286号
預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面に記載された払込みの時期については、設立時発行株式に関する事項が定められている定款(商業登記法第47条2項1号)の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面(同条第 3項)に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、 その前に払込みがあった場合であっても、発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る(平成29年3月17日民商第41号通達参照))の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、差し支えない。
払込取扱場所
資本金は金融機関に入金してもらう。この金融機関とは〇〇銀行と名のつく金融機関だけでなく、次のものも認められる。
- 株式会社ゆうちょ銀行 ※昔の郵政公社は不可であった。
- 外国金融機関の本店(会社法施行規則7条・銀行法47条)
- 信用金庫(会社法施行規則7条)
- 農業協同組合(会社法施行規則7条)
- ネット銀行(銀行法4条1項)
- 邦銀の海外支店(平成28年12月20日民商179号)
会社法
(出資の履行)
第三十四条 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。
2 前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。
会社法施行規則
(銀行等)
第七条 法第三十四条第二項に規定する法務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 株式会社商工組合中央金庫
二 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第三号の事業を行う農業協同組合又は農業協同組合連合会
三 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第四号、第八十七条第一項第四号、第九十三条第一項第二号又は第九十七条第一項第二号の事業を行う漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合又は水産加工業協同組合連合会
四 信用協同組合又は中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会
五 信用金庫又は信用金庫連合会
六 労働金庫又は労働金庫連合会
七 農林中央金庫
払込があったことを証する書面
払込があったことを証する書面とは株式会社設立登記申請に添付する書類で、資本金が入金されたことを設立時代表取締役が証明するものである。
なお、以前はこの書類に記名押印が必要であったが、現在では不要である。
払込があったことを証する書面の注意点は次の通りである。
- 残高証明書では不可→出資の時期が不明確であるから
- 振込又は預入いずれでも可
- 発起人各自が入金しなくても可
- 複数回にわけての入金でも可
- 資本金より多い金額の入金でも可
- 発起人が法人場合、その代表者個人の口座への入金は不可
- 発起人毎に口座への入金は可
平成3年1月29日民商10号「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」(通達)
主要な株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面,資本金の額の計上に関する証明書等,法令上,押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない書面については,押印の有無について審査を要しないものとする。また,商登規第49条第2項又は第61条第7項の謄本については,押印の有無について審査を要しないものとする。
口座名義人
資本金を入金する口座名義人は原則発起人である。
ただし、設立時取締役が発起人から払い込みの受領委任を受けていればその設立時取締役の口座への入金でも可である。この場合には発起人から設立時取締役への委任状を添付する。なお、この文言は「出資の払込を受領する権限を設立時代表取締役〇〇に委任」である。
また、発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合、口座名義人は発起人及び設立時取締役以外の者であっても差し支えない(平成29年3月17日民商第41号通達)。
※募集設立の場合には払込保管証明書を金融機関で発行してもらうことが必要である。
認証手数料
定款認証手数料は定款記載の資本金の額で決まる。そして、定款に資本金の記載がない場合には出資の価額で判断される。さらに資本金及び出資の価額いずれの記載もない場合には出資の最低額で判断される。
ここで、出資の最低額を定款で定めていると手数料は一律金5万円となるので注意が必要である。
例えば資本金(出資の価額)が100万円以上300万円未満の場合、定款に資本金又は出資の価額として定めれば手数料は金4万円であるが、出資の最低額として定めれば手数料は金5万円となる。すなわち、これらの文言の違いで金1万円の差が発生する。
定款認証手数料
定款記載の資本金又は出資の価額が
- 100 万円未満のもの→金3万円
- 100万円以上300万円未満のもの→金4万円
- 前2号に掲げる場合以外のもの→金5万円
電磁的記録の保存
電子定款はUSBメモリなどで受け取る。これは電磁的記録の保存と呼ばれ、手数料は300円である。
同一の情報の提供
電磁的記録の保存とは別に、認証済みの定款を紙媒体で受け取ることもできる。これは「同一の情報の提供」と呼ばれる。「同一の情報の提供」は紙定款一部当たり700円である。
また、紙定款の枚数に応じた手数料があり、20円/1枚である。なお、表紙は枚数にカウントされない。
紙定款の必要性
そもそも認証された定款は設立登記申請以外で使用することはほぼない。
そのため、紙定款の交付を受ける必要性は低い。もっとも、認証された定款の再発行には手間がいるので、紙定款一部と電子定款をあわせて納品するのが無難である。
なお、設立登記申請をオンライン申請する場合にはUSBで受け取った電子定款を申請情報に添付すると紙定款の添付は不要である。
株式会社設立手続きの書類
押印が必要な書類
- 定款認証のための委任状(発起人全員の個人実印)
- 株式会社設立登記申請の委任状(届出印)
- 取締役等の就任承諾書(個人実印)
- 印鑑届書(印鑑届をする者の個人実印と届出印)
- 印鑑カード交付申請書(届出印)
押印が不要な書類
- 表明保証書(署名の場合)
- 本店所在場所の決定書
- 設立時取締役等を選任した決定書
- 発起人が割り当てを受けるべき株式及び払込金額の決定書
- 資本金の額の決定書
- 払込があったことの証明書
商号
商号にはローマ字の大文字及び小文字を用いることができる。
そして、この場合にはローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることができる。
また、同一本店所在場所に同一の商号の株式会社を設立することはできない。そこで、事前に登記情報提供サービスを用いて商号調査をする。
登録免許税
特定創業支援等事業による支援を受けて会社の設立をした場合には減税措置がある。この場合には市町村発行の証明書を添付する。
登録免許税減税の根拠は租税特別措置法第80条第2項第1号である。
経済産業省関係産業競争力強化法施行規則
(認定特定創業支援等事業により支援を受けたことの証明)
第七条 法第二条第二十九項第一号若しくは第三号の認定特定創業支援等事業により支援を受けて創業を行おうとする者又は同項第二号に掲げる者のうち当該支援を受けた者は、当該支援を受けたことについて、当該認定特定創業支援等事業が記載された創業支援等事業計画の認定を受けた市町村の長の証明を受けなければならない。
2 前項の規定により証明を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を市町村の長に提出しなければならない。
一 証明を受けようとする者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 支援を受けた認定特定創業支援等事業の内容及び期間
三 前号の支援を受けて行う事業の内容
四 前号の事業の開始時期