目次
問題の所在
管理不全土地管理命令と管理不全建物管理命令(以下、「本命令」といいます。)は管理不十分な不動産を適正に管理処分するための制度です。
本命令は民法264条の9以下で規定されています。
ところで、不動産の管理が不十分な場合には近隣住民に悪影響を与えることがありますが、この場合に近隣住民がとる手段には所有権に基づく妨害排除請求や不法行為に基づく損害賠償請求があります。
もっとも、これらは管理不十分な不動産の所有者に代わって管理する制度ではありませんので、実効性が低いです。
そこで、本命令が設けられました。もっとも、本命令によっても不動産の処分をするには所有者の同意が必要です。このように管理が不十分といえど、不動産は所有者の財産であることに配慮がなされています。
管理不全土地管理命令の概要
発令要件
管理不全土地管理命令は土地所有者・共有者の土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合に利害関係人の請求により発令されます。
管理不全土地管理人
裁判所が管理不全土地管理命令をする場合には、併せて管理不全土地管理人が選任されます。
管理不全土地管理命令の効果
次に管理不全土地管理命令の効果を説明します。
及ぶ範囲
管理不全土地管理命令の効力は対象の土地又はその共有持分だけでなく、その土地にある所有者又は共有者の動産にも及びます。
管理不全土地管理人の権限
管理不全土地管理人は管理不全土地管理命令の対象の土地、その土地にある所有者又共有者の動産及び土地の管理・処分などによって発生した対価を管理・処分する権利を有します。なお、管理不全土地管理人が管理・処分する権利を有するこれらの財産を「管理不全土地等」といいます。
また、管理不全土地管理人が次の行為を超える行為をするには裁判所の許可が必要です。
- 保存行為
- 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
土地の処分
このように管理不全土地管理人は管理不全土地等の管理・処分権を有しますが、管理不全土地管理命令の対象の土地を処分するには裁判所の許可に加えて所有者又は共有者の同意が必要です。
訴え
管理不全土地等に関する訴えについては、原則通り土地の所有者又は共有者が原告又は被告となります。
管理不全土地管理人の義務
管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければなりません。
また、数人の者の共有持分を対象として管理不全土地管理命令が発せられた場合には管理不全土地管理人は、共有者全員のために誠実かつ公平にその権限を行使しなければなりません。
管理不全建物管理命令の概要
管理不全建物管理命令は民法264条の14に規定されており、中身は管理不全土地管理命令とほぼ同じです。
但し、管理不全建物管理命令の効力は、管理不全建物管理命令の対象とされた建物、その建物にある所有者又は共有者の動産だけでなく、所有者又は共有者が有する建物の敷地に関する権利(所有権を除く。)にも及びます。