制度趣旨
民事訴訟をする場合、原告被告双方に訴訟能力が必要。
被告が訴訟無能力者である場合は、被告の親権者や後見人などの法定代理人が訴訟行為をする。
では、被告に法定代理人がいない場合、原告はどうするのか。
そこで、民事訴訟法の特別代理人制度の出番である。
法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。
本来であれば被告の法定代理人を選任し、その法定代人が訴訟行為をすべきである。
しかし、法定代理人を選任するということは、具体的には後見人を選任することが考えられるが、それには時間がかかる。
原告が訴訟を検討している時点で、原告は悠長にしていられないのが現実であろう。
そこで、受訴裁判所に対し、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明するという条件で特別代理人の選任が認められている。
法人の場合
この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団でその名において訴え、又は訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する。
特別代理人の規定は、法人や権利能力なき社団の場合にも準用されている。
法人の場合の具体例は、会社役員が全員死亡の場合である。
法人所有の不動産の任意売却を予定している場合は、仮取締役かスポット清算人の選任の手続になると考えられるので注意が必要である。
制度の限界
前述の特別代理人制度は以下のような特徴がある。
- 選任できるのは、遅滞のため損害を受けるおそれがある場合
- 特別代理人訴訟毎に選任が必要(本案提起と執行手続毎に選任要)
- 裁判外の行為につき権限なし(任意売却は不可?)