合同会社の長所と短所

合同会社と株式会社

個人事業主が節税のために会社組織に移行する場合や、会社組織で小規模なビジネスをスタートする場合、かかる会社は小規模な形態をとることが多いです。

例えば、会社の出資者と業務執行者がいずれも個人の代表者一人のみの場合です。このような会社をここでは便宜的に「小規模会社」とよびます。

なお、「会社の出資者であること」は「会社の所有者であること」を、「会社の業務執行者であること」は「会社の経営者であること」を意味します。

そして、合同会社における出資者を「社員」、業務執行者を「業務執行社員」といいます。

これに対し、株式会社における出資者を「株主」、業務執行者を「取締役」といいます。

所有と経営

ところで、株式会社では出資者である「株主」と、業務執行者である「取締役」の役割を、別々の人間が担うことを想定しています。そして、これは会社の「所有と経営の分離」を意味します。

これに対し、合同会社では出資者である「社員」と、業務執行者である「業務執行社員」の役割を、同じ人間が担うことを想定しています。そして、これは会社の「所有と経営の一致」を意味します。

この点、小規模会社のように、出資者と業務執行者がいずれも個人の代表者一人のみである場合には会社の所有と経営が一致しています。そのため、このような場合には「株式会社と合同会社どちらを選択すべきか」という悩みが生じやすいです。

比較

そこで、ここでは出資者である「社員」と、業務執行者である「業務執行社員」がいずれも個人の代表者一人のみの場合の、合同会社の長所と短所を説明します。なお、ここでは税務上の長所と短所については言及しません。

また、基本的に合同会社の長所は株式会社の短所であり、合同会社の短所は株式会社の長所であると考えてよいです。

合同会社の長所

まず合同会社の長所を説明します。

定款認証

会社は法務局に会社設立登記を申請することで成立します。この申請では会社の定款を添付します。

そして、合同会社の会社設立登記に添付する定款には公証人の認証は不要です。この公証人による定款の認証を「定款認証」といいます。

よって、合同会社の設立手続きでは定款認証の手間と費用がかかりません。

これに対し、株式会社の設立手続きでは定款認証が必要です。

なお、定款認証は基本的に株式会社の設立手続き時にしか行いません。

登録免許税

会社設立登記を申請する場合には登録免許税を納付します。

そして、合同会社の会社設立登記の登録免許税の最低額は金6万円です。

これに対し、株式会社の会社設立登記の登録免許税の最低額は金15万円です。

ところで、会社設立登記の登録免許税額は会社の資本金の額によって決まるところ、小規模会社は資本金の額が少額であることが多いです。

そのため、小規模会社である合同会社と株式会社いずれの場合も会社設立登記の登録免許税額は、それぞれの最低額となることが多いです。

任期

合同会社の業務執行者である「業務執行社員」には任期がありません。

これに対し、株式会社の業務執行者である「取締役」には任期があります。そのため、取締役の任期満了時には取締役の再任の登記が必要です。

計算書類

合同会社には計算書類の公告義務がありません。

これに対し、株式会社には計算書類の公告義務があります(会社法440条)。

合同会社の短所

次に合同会社の短所を説明します。

知名度

合同会社の知名度は株式会社の知名度より格段に低いです。

また、合同会社の肩書は次のようになります。

〇〇合同会社 代表社員 △△

これに対し、株式会社の肩書は次のようになります。

〇〇株式会社 代表取締役 △△

もっとも、この知名度が業務にどれだけ重要であるかは業種によって異なります。

例えば、美容院や飲食店を経営する会社が、「株式会社」であるか、「合同会社」であるかは顧客にとってさほど重要ではないでしょう。

これに対し、メディア露出を予定している会社や、企業間取引を行う会社にとっては、会社が「株式会社」であるか、「合同会社」であるかが極めて重要な場合があるでしょう。

業務執行者の加入

合同会社の業務執行者である「業務執行社員」を加入させる場合、新たに加入する業務執行社員は同時に会社の出資者である「社員」になります。

これに対し、株式会社の業務執行者である「取締役」を追加する場合、新たに就任する取締役は会社の出資者である「株主」にはなりません。

(社員の加入)
第六百四条 持分会社は、新たに社員を加入させることができる。
2 持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。
3 前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。