公共嘱託登記司法書士協会

社員

公共嘱託登記司法書士協会とは司法書士及び司法書士法人を社員とする一般社団法人である。

公共嘱託登記司法書士協会は、官庁、公署その他政令で定める公共の利益となる事業を行う者(以下「官公署等」という。)による不動産の権利に関する登記の嘱託又は申請の適正かつ迅速な実施に寄与することを目的とする。

また、公共嘱託登記司法書士協会の社員については次のような制約がある。

  1. 社員は、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に事務所を有する司法書士又は司法書士法人でなければならない。
  2. 司法書士又は司法書士法人が社員になろうとするときは、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。
  3. 理事の員数の過半数は、社員(社員である司法書士法人の社員を含む。)でなければならない。

業務

公共嘱託登記司法書士協会は既述の目的を達成するため、官公署等の嘱託を受けて、不動産の権利に関する登記につき司法書士法第三条第一項第一号から第五号までに掲げる事務を行う。

同項一号から五号の業務とは主に次のものである。

  1. 登記又は供託に関する手続について代理すること。
  2. 法務局又は地方法務局に提出する書類を作成すること。
  3. 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
  4. 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続において法務局若しくは地方法務局に提出する書類作成すること。
  5. 前各号の事務について相談に応ずること。

長期相続登記等未了土地解消作業

ところで、公共嘱託登記司法書士協会が長期相続登記等未了土地解消作業を入札によって受託するのが近年の流行である。

長期相続登記等未了土地解消作業とは、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第44条に基づく登記官の業務の一環である。

すなわち、同法が委任する、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令第1条では、登記官は所有権の登記名義人となり得る者の探索を行い、土地の所有権の登記名義人に係る法定相続人情報を作成する旨を規定している。

つまり、長期相続登記等未了土地解消作業を受託した公共嘱託登記司法書士協会は、該当土地の登記名義人に関する戸籍謄本等を取り寄せ調査したうえで法定相続人情報を作成する。

根拠

ここで、この「法定相続人情報作成業務」が公共嘱託登記司法書士協会の業務に含まれるかを検討する。

法定相続人情報の作成においては所有権の登記名義人となり得る者の探索をするので、「不動産の権利に関する登記」についての業務である。これに関しては公共嘱託登記土地家屋調査士協会が長期相続登記等未了土地解消作業を受託することは疑義が生じるだろう。

次に法定相続人情報作成業務が、司法書士法第三条第一項第一号から第五号までに掲げる事務のいずれに該当するかを検討すると、条文を文理解釈するといずれにも該当しない。そのため、公共嘱託登記司法書士協会が長期相続登記等未了土地解消作業を受託することは疑義が生じるだろう。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

第四十四条 登記官は、起業者その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じ、当該事業を実施しようとする区域内の土地につきその所有権の登記名義人に係る死亡の事実の有無を調査した場合において、当該土地が特定登記未了土地に該当し、かつ、当該土地につきその所有権の登記名義人の死亡後十年以上三十年以内において政令で定める期間を超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索した上、職権で、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨その他当該探索の結果を確認するために必要な事項として法務省令で定めるものをその所有権の登記に付記することができる。
2 登記官は、前項の規定による探索により当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を知ったときは、その者に対し、当該土地についての相続登記等の申請を勧告することができる。この場合において、登記官は、相当でないと認めるときを除き、相続登記等を申請するために必要な情報を併せて通知するものとする。
3 登記官は、前二項の規定の施行に必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、第一項の土地の所有権の登記名義人に係る死亡の事実その他当該土地の所有権の登記名義人となり得る者に関する情報の提供を求めることができる。
4 前三項に定めるもののほか、第一項の規定による所有権の登記にする付記についての登記簿及び登記記録の記録方法その他の登記の事務並びに第二項の規定による勧告及び通知に関し必要な事項は、法務省令で定める

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令

(法定相続人情報)
第一条 登記官は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下「法」という。)第四十四条第一項の規定により長期相続登記等未了土地(法第二条第四項の特定登記未了土地に該当し、かつ、当該土地の所有権の登記名義人の死亡後十年間を超えて相続による所有権の移転の登記その他の所有権の登記がされていない土地をいう。以下同じ。)の所有権の登記名義人となり得る者の探索を行った場合には、当該長期相続登記等未了土地の所有権の登記名義人に係る法定相続人情報を作成するものとする。
2 法定相続人情報には、次の各号に掲げる事項を記録するものとする。
一 被相続人である所有権の登記名義人の氏名、出生の年月日、最後の住所、登記簿上の住所及び本籍並びに死亡の年月日
二 前号の登記名義人の相続人(被相続人又はその相続人の戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書により確認することができる相続人となり得る者をいう。以下この項において同じ。)の氏名、出生の年月日、住所及び当該登記名義人との続柄(当該相続人が死亡しているときにあっては、氏名、出生の年月日、当該登記名義人との続柄及び死亡の年月日)
三 第一号の登記名義人の相続人(以下この項において「第一次相続人」という。)が死亡している場合には、第一次相続人の相続人(次号において「第二次相続人」という。)の氏名、出生の年月日、住所及び第一次相続人との続柄(当該相続人が死亡しているときにあっては、氏名、出生の年月日、当該第一次相続人との続柄及び死亡の年月日)
四 第二次相続人が死亡しているときは、第二次相続人を第一次相続人と、第二次相続人を第一次相続人の相続人とみなして、前号の規定を適用する。当該相続人(その相続人を含む。)が死亡しているときも、同様とする。
五 相続人の全部又は一部が判明しないときは、その旨
六 作成番号
七 作成の年月日
3 前項第六号に規定する作成番号は、十二桁の番号とし、登記所ごとに第一項の法定相続人情報を作成する順序に従って付すものとする。
4 登記官は、第一項の法定相続人情報を電磁的記録で作成し、これを保存するものとする。

(設立及び組織)
第六十八条 その名称中に公共嘱託登記司法書士協会という文字を使用する一般社団法人は、社員である司法書士及び司法書士法人がその専門的能力を結合して官庁、公署その他政令で定める公共の利益となる事業を行う者(以下「官公署等」という。)による不動産の権利に関する登記の嘱託又は申請の適正かつ迅速な実施に寄与することを目的とし、かつ、次に掲げる内容の定款の定めがあるものに限り、設立することができる。
一 社員は、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に事務所を有する司法書士又は司法書士法人でなければならないものとすること。
二 前号に規定する司法書士又は司法書士法人が社員になろうとするときは、正当な理由がなければ、これを拒むことができないものとすること。
三 理事の員数の過半数は、社員(社員である司法書士法人の社員を含む。)でなければならないものとすること。
2 前項に規定する定款の定めは、これを変更することができない。
(成立の届出)
第六十八条の二 前条第一項の一般社団法人(以下「協会」という。)は、成立したときは、成立の日から二週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長及びその管轄区域内に設立された司法書士会に届け出なければならない。
(業務)
第六十九条 協会は、第六十八条第一項に規定する目的を達成するため、官公署等の嘱託を受けて、不動産の権利に関する登記につき第三条第一項第一号から第五号までに掲げる事務を行うことをその業務とする。
2 協会は、その業務に係る前項に規定する事務を、司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者に取り扱わせてはならない。
(協会の業務の監督)
第六十九条の二 協会の業務は、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長の監督に属する。
2 前項の法務局又は地方法務局の長は、協会の業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、いつでも、当該業務及び協会の財産の状況を検査し、又は協会に対し、当該業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(司法書士及び司法書士法人に関する規定の準用)
第七十条 第二十一条の規定は協会の業務について、第四十八条第一項、第四十九条及び第五十一条の規定は協会に対する懲戒について、それぞれ準用する。この場合において、第四十八条第一項、第四十九条第一項から第三項まで及び第五十一条中「法務大臣」とあるのは、「第六十九条の二第一項に規定する法務局又は地方法務局の長」と読み替えるものとする。
(司法書士会の助言)
第七十一条 司法書士会は、所属の会員が社員である協会に対し、その業務の執行に関し、必要な助言をすることができる。