要件
買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。
これを不動産登記法第69条の2の規定による抹消という。
「契約の日から十年を経過」したか否かは、登記記録中の登記原因及びその日付から判断する。
すなわち、買戻特約の原因である「年月日特約」の日付から10年経過していれば不動産登記法第69条の2の規定による抹消ができる。
判断基準
不動産登記法第69条の2を文理解釈すると買戻特約から10年経過したことが要件であると解される。
これに対し、法務省民二第538号令和5年3月28日では、「買戻しの特約がされた売買契約の日から10年を経過したとき」とされている。
この点につき買戻特約は売買契約と同時にしなければならない、すなわち、特約日=売買契約日となるので、このような表現上の乖離が生まれるが、結論は同じである。
所有権移転日
ところで、売買契約に基づく所有権移転登記を申請する場合、その原因は「年月日売買」である。
そして、この原因日付は不動産の所有権移転日であり、必ずしも不動産の売買契約日と一致しない。
そのため、かかる原因日付を基に既述の特約日を判断することは不適切である。
登記申請書
登記の目的
「3番付記1号買戻権抹消」のように記入する。
登記原因
登記原因は「不動産登記法第69条の2の規定による抹消」である。
また、登記原因の日付を要しない。
登記義務者
登記義務者は記録上の主たる事務及び名称を記入すれ足りる。
代表者の記入は不要である。
添付書類
不動産登記法第69条の2の規定により登記権利者が単独で買戻しの特約に関する登記の抹消を申請する場合には、登記原因証明情報を提供することを要しない。
登録免許税
不動産の個数×1,000円
通知
登記官は、不動産登記法第69条の2の規定による申請に基づく買戻しの特約に関する登記の抹消を完了した場合は、当該登記の登記名義人であった者に対し、登記が完了した旨を通知する(不動産登記規則第183条第1項第3号)。
この通知は当該登記の登記名義人であった者の登記記録上の住所宛に発送される。
(買戻しの特約に関する登記の抹消)
第六十九条の二 買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。
(申請人以外の者に対する通知)
第百八十三条 登記官は、次の各号に掲げる場合には、当該各号(第一号に掲げる場合にあっては、申請人以外の者に限る。)に定める者に対し、登記が完了した旨を通知しなければならない。
一 表示に関する登記を完了した場合 表題部所有者(表題部所有者の更正の登記又は表題部所有者である共有者の持分の更正の登記にあっては、更正前の表題部所有者)又は所有権の登記名義人
二 民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わってする申請に基づく登記を完了した場合 当該他人
三 法第六十九条の二の規定による申請に基づく買戻しの特約に関する登記の抹消を完了した場合 当該登記の登記名義人であった者
2 前項の規定による通知は、同項の規定により通知を受けるべき者が二人以上あるときは、その一人に対し通知すれば足りる。
3 第一項第一号の規定は、法第五十一条第六項(法第五十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による登記には、適用しない。
4 登記官は、民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記についてする次の各号に掲げる事由による所有権の更正の登記の申請(登記権利者が単独で申請するものに限る。)があった場合には、登記義務者に対し、当該申請があった旨を通知しなければならない。
一 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言による所有権の取得
二 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の取得
(買戻しの特約)
第五百七十九条 不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第五百八十三条第一項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。(買戻しの期間)
第五百八十条 買戻しの期間は、十年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする。
2 買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない。
3 買戻しについて期間を定めなかったときは、五年以内に買戻しをしなければならない。