合同会社設立登記に関する用語
はじめに合同会社設立登記に関する用語を説明します。
定款
定款とは合同会社を運営するための規則です。定款の内容は社員が決めます。定款には合同会社の商号、本店所在地など合同会社運営において重要な事項が定められています。
(なお、合同会社設立登記の申請書に添付する定款には公証人の認証は不要です。)
社員
社員とは合同会社の出資者です。社員は原則合同会社の業務を執行します。
業務執行社員
合同会社の業務を執行する社員を業務執行社員といいます。社員が一人の場合はこの一人が業務執行社員です。
また、社員が複数人いる場合、定款で社員の中から業務執行社員を定めることができます。
代表社員
業務執行社員は原則合同会社を代表します。この合同会社を代表する業務執行社員を「代表社員」といいます。
また、定款で業務執行社員の中から代表社員を定めることができます。
職務執行者
社員は個人だけでなく、法人もなることができます。そして、法人が代表社員であるときは、この法人は代表社員の職務を行う者を定めます。この職務を行う者を「職務執行者」といいます。
履歴事項証明書
合同会社の存在は法務局が発行する履歴事項証明書で証明します。よって、銀行口座開設、許認可、税務署への届出、社会保険加入手続きなどでは履歴事項証明書が必要です。なお、履歴事項証明書は合同会社設立登記が完了した後でなければ取得できません。
印鑑証明書
合同会社は法務局にその印鑑を登録することができます。印鑑登録をすることで法務局で印鑑証明書を取得できます。そして、この印鑑のハンコを会社実印といいます。また、印鑑証明書を取得するには予め印鑑カードの交付を受けなければなりません。
本店所在地
合同会社の本店の住所の内、最小行政区画までの部分を本店所在地(会社法576条3号)といいます。例えば合同会社の住所が島根県松江市殿町一丁目1番1号の場合、島根県松江市までの部分が本店所在地です。定款では本店所在地まで定めれば足ります。
本店所在場所
これに対し、本店の住所全ての表記を本店所在場所(会社法914条3号)といいます。先の例でいえば、島根県松江市殿町一丁目1番1号の表記すべてが本店所在場所です。
なお、定款で本店所在地まで定めている場合は合同会社設立登記申請書に本店所在場所を定めた社員の決定書を添付します。
書面申請
登記申請にはオンライン申請と書面申請があります。書面申請では登記申請書を書面で作成し、添付書類と一緒に管轄法務局に持参又は郵送します。また、書面申請にはQRコード(二次元バーコード)付き書面申請もあります。
オンライン申請
オンライン申請とはインターネットで行う登記申請です。オンライン申請では申請用ソフトをパソコンにダウンロードし、登記申請情報などに電子署名をして登記を申請します。
以上が合同会社設立登記に関する用語です。
合同会社設立登記申請の流れ
次に合同会社設立登記申請の流れを説明します。
以上が合同会社設立登記申請の流れです。
合同会社設立登記申請の添付書類
次に合同会社設立登記申請の添付書類を説明します。ここでは社員が個人一人で、かつ金銭のみを出資する場合の添付書類を説明します。
なお、社員が一人の場合にはこの者が業務執行社員であり、代表社員です。
定款
社員が作成した定款を添付します。
決定書
合同会社設立登記申請をするには、定款記載事項のほかに定めなければならない事項があります。ここではこの事項を「定款で定めていない事項」といいます。
「定款で定めていない事項」は社員が定め、その内容を記載した決定書を作成し、社員が記名します。
また、定款で定めていない事項とは
- 本店所在場所
- 資本金の額
などです。なお、これらを定款で定めると、この決定書の作成は不要です。
就任承諾書
代表社員の就任承諾書を添付します。代表社員が個人の場合は個人の実印を押印します。
印鑑登録証明書
就任承諾書に押印した代表社員の市区町村発行の印鑑登録証明書を添付します。
払込証明書
払込証明書とは出資金が払い込まれたことを証明する書面です。例えば、代表社員が自分の預貯金口座に出資金を預入れ、その預貯金口座通帳をコピーしたものです。
また、払込みを受けた出資金を証明する書面を作成し、代表社員が記名します。
印鑑届書
合同会社のハンコの印鑑登録をするための届書です。
印鑑カード交付申請書
印鑑カードを交付してもらうための申請書です。
以上が合同会社設立登記申請の添付書類です。
定款作成例
次に合同会社の定款の作成例を説明します。ここでは社員が個人一人で、かつ金銭のみを出資する場合の定款の作成例を説明します。
合同会社の定款のひな形はネットで「合同会社 定款」と検索すれば法務局のサイトでダウンロードできます。ここでは定款の主な項目について説明します。
商号
商号とは合同会社の名称です。商号には「合同会社」の文言を入れなければなりません。「合同会社」の文言は名称の前でも後でもよいです。
個人事業主が法人成りする場合は屋号を商号とすることが多いです。
目的
目的とは合同会社の事業内容です。優先順位の高い事業から順番に目的として記載します。目的の最後には「前各号に附帯する一切の事業」と入れます。
なお、合同会社設立後、合同会社で許認可を取得する予定があれば許認可が受けられるよう考慮して目的を定めます。
本店所在地
本店所在地とは本店の住所です。定款では通常、本店の住所の全部を定めるのではなく、本店の住所の最小行政区画、すなわち市区町村まで定めます。
例えば合同会社の住所が島根県松江市殿町一丁目1番1号の場合、定款には島根県松江市まで定めれば足ります。このようにすることで、合同会社設立後に松江市内で住所を移転しても定款変更が不要となります。無論、定款で島根県松江市殿町一丁目1番1号のように本店所在場所まで定めても構いません。
公告方法
公告方法には複数の方法がありますが、特に希望がなければ、「当会社の公告は、官報に掲載してする。」とします。
社員の氏名・住所、出資及び責任
社員の氏名・住所、出資及び責任には次のように記入します。出資金の額、社員の住所、「有限責任社員」の文言及び社員の氏名を記入します。
- 社員の氏名及び住所、出資の価額並びに責任は次のとおりである。
金10万円 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号 有限責任社員〇〇
事業年度
合同会社の決算月を決めて、そこから遡って1年間を事業年度とします。例えば、6月決算の場合、事業年度は7月1日から6月30日です。
合同会社設立登記申請書の書き方
最後に合同会社設立登記申請書の書き方を説明します。ここでは社員が個人一人で、かつ金銭のみを出資する場合の申請書の書き方を説明します。
商号
定款記載の商号を記入します。
また、フリガナはカタカナで記入し、「ゴウドウガイシャ」の部分の記入は不要です。
本店
本店には本店所在場所を記入します。
登記事由
「設立の手続終了」と記入します。
登記すべき事項
登記すべき事項には登記事項となる情報を定款、決定書、印鑑登録証明書及び払込証明書のとおり正確に記入します。
登記事項となる情報とは例えば、商号、本店所在場所、公告をする方法、目的、資本金の額、社員に関する事項、登記記録に関する事項です。
「商号」〇〇合同会社
「本店」〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
「公告をする方法」官報に掲載してする。
「目的」
1 洋菓子の製造販売
2 前各号に附帯する一切の事業
「資本金の額」金10万円
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」〇〇
「社員に関する事項」
「資格」代表社員
「住所」〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
「氏名」〇〇
「登記記録に関する事項」設立
課税標準金額
課税標準金額には資本金の額を記入します。
登録免許税
登録免許税にはその金額を「金〇〇円」と記入します。登録免許税の金額は資本金の額の0.7%の値です。但し、この値が6万円未満の場合は6万円です。
添付書類
添付書類には「定款」、「決定書」、「就任承諾書」、「印鑑登録証明書」、「払込証明書」と記入し、それぞれの通数も記入します。
末尾
最後に、「上記のとおり登記の申請をします。」という文言、申請日、本店、商号、代表社員の肩書・住所・氏名、連絡先及び管轄の法務局名を記入し、法務局に届け出る印鑑を押印します。
また、管轄の法務局は設立する合同会社の本店を管轄する法務局です。ネットで「(都道府県名) 商業登記 管轄」と検索すれば管轄法務局が出てきます。
(定款の記載又は記録事項)
第五百七十六条 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 社員の氏名又は名称及び住所
五 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
2 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
3 設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
4 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
(業務の執行)
第五百九十条 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
2 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
3 前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。
(業務を執行する社員を定款で定めた場合)
第五百九十一条 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。この場合における前条第三項の規定の適用については、同項中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」とする。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、その効力を失う。
4 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
5 前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。
6 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
(業務を執行する社員と持分会社との関係)
第五百九十三条 業務を執行する社員は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行う義務を負う。
2 業務を執行する社員は、法令及び定款を遵守し、持分会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
3 業務を執行する社員は、持分会社又は他の社員の請求があるときは、いつでもその職務の執行の状況を報告し、その職務が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
4 民法第六百四十六条から第六百五十条までの規定は、業務を執行する社員と持分会社との関係について準用する。この場合において、同法第六百四十六条第一項、第六百四十八条第二項、第六百四十八条の二、第六百四十九条及び第六百五十条中「委任事務」とあるのは「その職務」と、同法第六百四十八条第三項第一号中「委任事務」とあり、及び同項第二号中「委任」とあるのは「前項の職務」と読み替えるものとする。
5 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
(持分会社の代表)
第五百九十九条 業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の業務を執行する社員が二人以上ある場合には、業務を執行する社員は、各自、持分会社を代表する。
3 持分会社は、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる。
4 持分会社を代表する社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(合同会社の設立の登記)
第九百十四条 合同会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる事項を登記してしなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店及び支店の所在場所
四 合同会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
五 資本金の額
六 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
七 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
八 合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所
九 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
十 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め
十一 第九号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨