目次
家事調停の概要
調停とは裁判官と調停委員の関与の下、当事者間の話し合いによる紛争解決の手続きである。
そして、家事調停は下記の3つに大別される。
- 別表第2調停
- 特殊調停
- 一般調停
また、家事事件では調停前置主義が採用されている(家事事件手続法257条1項)。
すなわち、調停ができる事件については、いきなり訴えを提起するのではなく、調停を申し立てることが原則とされている。
別表第2調停
内容
家事事件手続法別表第2に掲げる事項に関する調停を指す。
例えば下記の事件がある。
- 親権者の変更
- 養育費の請求
- 婚姻費用の分担
- 遺産分割
これらの特徴は裁判所が積極的に介入すべきでなく、第一次的には当事者間の話し合いが尊重される事件であることである。
調停成立の場合
別表第2調停が成立すると、その調停調書は確定した審判と同一の効力がある(家事事件手続法268条1項)。
「確定した審判と同一の効力」とは、単なる債務名義として使えるだけでなく、執行力ある債務名義として使えることを意味する。
すなわち、執行文無しに強制執行が可能である。
もっとも、家事事件手続法別表第2に掲げる事項以外の事項も併せて調停した場合は、執行力はない。
例えば、養育費の支払い及び慰謝料の支払いを合意した調停調書がある場合に、債務者が滞納したとき、養育費の請求については執行文は不要だが、慰謝料の請求については執行文が必要となる。
調停不成立の場合
調停が不成立の場合は訴えの提起がない限り自動的に審判手続きに移行する(家事事件手続法272条4項)。
なお、調停が成立しない場合でも、一定の要件を満たせば「調停に代わる審判」がされることがある。
特殊調停
内容
特殊調停は本来的には調停になじまない事件を扱う。
例えば下記の事件がある。
- 協議離婚の無効確認
- 親子関係の不存在確認
- 嫡出否認
- 認知
これらの事件の解決は公益に関わるので、本来であれば人事訴訟で審理すべきである。
もっとも、一定の要件を満たせば「合意に相当する審判」がされる。
調停成立の場合
確定した「合意に相当する審判」は、確定判決と同一の効力が認められる((家事事件手続法281条)。
調停不成立の場合
調停が不成立の場合、解決のためには改めて家庭裁判所に人事訴訟を提起する必要がある。
一般調停
内容
家庭に関する紛争等の事件のうち、別表第2調停及び特殊調停を除いた事件をいう。
例えば下記の事件がある。
- 離婚
- 離縁
- 夫婦関係の円満調整
調停成立の場合
調停調書は、確定判決と同一の効力が認められる(家事事件手続法268条1項)。
調停不成立の場合
調停が不成立の場合、解決のためには改めて家庭裁判所に人事訴訟を提起する必要がある。
なお、調停が成立しない場合でも、一定の要件を満たせば、「調停に代わる審判」がされることがある。
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