法の下の平等(憲法7)

意義

憲法14条は、国家に対して国民を不合理に差別してはならない原則を定め、国民に対して平等に扱われる権利及び不合理な差別を受けない権利を保障している

「法の下に」の意味

法適用平等説

=立法者非拘束説

行政権・司法権が国民を差別してはならない

但し、14条1項後段列挙自由に基づく差別は立法権においても不可

法内容平等説

=立法者拘束説

立法権・行政権・司法権が国民を差別してはならない

法適用平等説と違い、法の内容も平等でなければならない

法の支配からの帰結

「平等」の意味

通説

憲法14条の「平等」は相対的平等を指す

平等の種類

絶対的平等

いかなる差別も許さない

⇔相対的平等

相対的平等

同一条件・同一事情では平等に扱う

但し、平等に扱う結果とそれをもたらす原因に合理的な関係が必要

⇒合理的な区別は許される(例:所得に比例する所得税率)

⇔絶対的平等

形式的平等

例:機会の平等

⇔実質的平等

実質的平等

例:国家が格差是正のための政策をすること(例:相続税)

⇔形式的平等

MEMO
14条の「平等」が実質的平等も含むかは争いがあるが、14条で保障されなくても社会権として保障されうる

積極的差別解消措置

アファーマティブアクション(affirmative action)

差別状態を解消するために逆差別的な政策をすること

例:公務員の男女割合における男子の偏在の解消するために、募集段階で採用人数の男女比を同一にする

注意
政策の恩恵を受けられない人に対する差別となる

違憲審査基準

厳格審査基準

目的:必要不可欠

手段:必要最小限度

厳格な合理性の基準

目的:重要

手段:目的との実質的関連性

合理的根拠の基準

目的:正当

手段:目的との合理的関連性

芦部説による基準の使い分け

差別の内容 審査基準
14条1項の列挙事由の内、人種又は信条による差別 厳格審査基準
14条1項の列挙事由の内、性別、社会的身分又は門地による差別 厳格な合理性の基準
14条1項の列挙事由以外で精神的自由に関する差別 厳格審査基準
14条1項の列挙事由以外で経済的自由の消極目的規制 厳格な合理性の基準
14条1項の列挙事由以外で経済的自由の積極的目的規制 合理的根拠の基準

判例要旨

サラリーマン税金訴訟(最大判昭60・3・27)
  • 租税法の立法目的が正当なものであり、かつ、区別の態様が目的の関連で著しく不合理であることが明らかでない限り14条1項違反とならない
学生無年金障害訴訟(最判平19・9・28)
  • 国民年金制度で具体的にどのような立法措置をとるかは立法府の裁量
  • 故に著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱、濫用がない限り、司法審査に適さない
国籍確認請求事件(最大判平20・6・4)
  • 国籍の得喪の要件は立法府の裁量判断
  • しかし、立法目的に合理的な根拠がない場合又は立法による区別と、目的との間に合理的関連性がない場合は違憲
  • 今日の社会的・経済的に環境に照らすと、日本国籍の取得の要件に準正を要件としていることと、立法目的との間に合理的関連性は見出しがたい
  • 認知された非嫡出子のみが日本国籍を取得できないことと、立法目的との間に合理的関連性は見出しがたい

性別による差別

審査基準

形式的平等にかかわるもの⇒厳格審査基準

実質的平等を達するためのもの⇒厳格な合理性の基準

判例要旨

再婚禁止期間訴訟(最大判平27・12・16)
  • いつ誰と結婚するかは憲法24条1項の規定の趣旨に照らし、十分尊重に値するもの
  • 民法733条の規定は父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあり、この立法目的は合理性がある
  • 再婚禁止期間の100日間の部分と目的との間に合理性あり
  • 医療や科学技術が発達した今日においては、100日超過部分と目的との間に合理性なし
  • 立法不作為の国家賠償が認められるかは、国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり、立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべき

社会的身分による差別

尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48・4・4)
  • 尊属殺重罰規定の目的は合理的な根拠を欠くものでない
  • しかし、加重の程度が極端である点が不合理であるから違憲
  • 少数意見:尊属殺は封建思想に基づくものだから、尊属殺の加重自体が法の下の平等に反し違憲
非嫡出子相続分差別規定違憲決定(最大判平25・9・4)
  • 相続制度をどのようにするかは立法府の合理的な裁量判断
  • 裁量を考慮しても区別に合理的根拠がなければ違憲
  • 嫡出子と非嫡出子の相続分を区別するかの価値観は時代と共に変遷する
  • 今日における家族形態の多様化と、父母の婚姻関係の有無は子に選択・修正する余地のないことを考慮すると、相続分の区別は違憲
夫婦同氏訴訟(最大判平27・12・16)
  • 氏名は個人の視点からみれば、人格の象徴であり、人格権の一内容を構成するもの
  • 氏は個人の呼称としての意義だけでなく、家族の呼称としての意義がある
  • そして婚姻等の身分変動に伴って氏が改められることは性質上予定されている
  • よって氏の変更を強制されない自由は憲法上の権利として保障される人格権の一内容とは言えないので憲法13条違反でない
  • 民法750条の規定は文言上性別に基づく法的な差別的扱いをしていないので、憲法14条1項違反でない
  • 民法750条の規定は婚姻をすることについての直接の制約を定めたものでないので、憲法24条1項の趣旨に沿わない制約を課したとは評価できない

投票価値の平等

定義

各投票が選挙の結果に対して持つ影響力の平等

⇒憲法上保障される(判例・通説)

較差

較差(投票価値の差)はどの程度許されるか

1対1を原則とし、技術的にやむを得ない場合のみ1対1から乖離が許される説

⇒参議院議員及び衆議院議員は全国民の代表であるから、いずれも較差は1対1を原則とすべき

地方選挙における較差

国政選挙と同様に考える説

合理的期間論

不平等状態であるだけで違憲とするのではなく、不平等状態を合理的期間内に是正しない場合に違憲とする理論

争う方法

公職選挙法204条

⇒選挙人が選挙の当否を争う唯一の方法

統治行為論の採用

不可とする説

⇒議員定数が不均衡であると、民主制の過程に瑕疵があることになるので司法権の積極的な介入が必要

違憲判決の効力

定数配分規定全体が違憲となる説

事情判決の法理

事情判決:処分が違法でも、処分を取り消すと公の利益に著しい障害をもたらす場合で、取り消しが公共の福祉に適合しないときは処分を取り消さないという判決(行政事件訴訟法31条1項)

投票価値の平等に関する訴訟につき、公職選挙法219条より事情判決は利用できないので、判例は「事情判決の法理」を利用する